Ⅰ型SMAの乳児に対する「リスジプラム」の治験、投与2年で運動機能改善を確認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. I型脊髄性筋萎縮症の乳児にリスジプラム投与の治験で、2年間の成績が発表された
  2. 17人中11人は首が座るようになり、5人は補助ありで立つことができた
  3. 2年時点で生存の14人全員が嚥下能力を維持し、13人が口から摂取可能だった

投与2年時点で推定88%が生存、人工呼吸器の永続的使用も不要

スイスのロシュ社は、乳児(生後1~7か月)のI型脊髄性筋萎縮症(SMA)患者さんを対象に、開発中の薬剤「リスジプラム」を投与した臨床試験(FIREFISH試験パート1)における、2年間の成績を発表しました。

SMAは、乳幼児では最も頻度の高い、命に関わる遺伝性疾患。脊髄の運動神経細胞の変性によって筋萎縮や筋力低下を示す病気です。リスジプラムは、中枢神経系および全身のSMNタンパク質レベルを増加させるように創製された、経口投与が可能な薬です。

この試験に登録された患者さんは21人。そのうち、17人にリスジプラムの治療用量が投与されました。治験登録時の年齢(中央値)は6.3か月、解析時点での最年少は28.4か月、最年長は45.1か月でした。

今回の解析の結果、投与2年時点で推定88%が生存し、人工呼吸器の永続的な使用を必要としないことがわかりました。また、最低5秒間支えなしで座位を保持したのは17人中10人(1年時点で17人中7人)、首が座るようになったのは17人中11人(1年時点で17人中9人)。寝返りを打つことができたのは5人(1年時点で17人中2人)、体重を支えるまたは補助することで立つことができたのは5人(1年時点で17人中1人)と、運動機能の改善が示されました。

2年時点で生存していた14人全員が嚥下能力(飲み込む力)を維持しており、13人がこの薬を口から摂取できました。

主な副作用は発熱、上気道感染症、重篤なものは肺炎

21人に対して試験中確認された主な副作用は、発熱(71%)、上気道感染症(52%)、咳嗽(33%)、嘔吐(33%)、下痢(29%)、呼吸器感染症(29%)でした。最も重篤な副作用は肺炎でした。

治療用量を投与された17人中2人はそれぞれ治療8か月、13か月の時点で致死的な合併症を経験し、うち1人は試験から脱落して3.5か月後に死亡しました。治験責任医師は、「これらの合併症とリスジプラムとの関係は認められていない」と、判断しています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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