RAS系阻害薬は、腎機能を守るために用いられる治療薬
神戸大学の研究グループは、アルポート症候群の治療に用いる「アンギオテンシン受容体拮抗薬」(RAS系阻害薬)について、原因遺伝子が軽症型変異か重度型変異かによって有効性が異なることを明らかにしました。
アルポート症候群は腎炎、難聴、白内障などの目の合併症を伴う遺伝性の病気。男性患者さんでは、40歳までに90%が腎不全になり、透析や腎臓移植などの腎代替療法が必要になります。腎保護作用が期待されるACE阻害薬やRAS系阻害薬を用いた治療が行われており、海外の報告では、尿タンパクの減少効果や、腎機能悪化の進行を抑制する効果が示されています。
RAS系阻害薬の有効性は、重症型変異より軽症型変異の方が高い
今回、研究グループは、日本人のアルポート症候群男性患者さん422人の臨床的特徴について、大規模な調査を行いました。その結果、RAS系阻害薬による治療が行われた群では、治療が行われなかった群に対し(中央値の比較で)末期腎不全進行年齢が20年以上遅くなっていることが判明しました。
さらに、原因遺伝子COL4A5の変異のタイプを、軽症型変異と重症型変異に分けて調べたところ、重症型変異を有する患者さんでは、RAS系阻害薬による治療は有効ではあったものの、軽症型変異の患者さんよりも有効性が劣ることがわかりました。
今回、遺伝子型の違いでRAS系阻害薬の有効性が異なることが世界で初めて示されました。研究グループは、「私たちは重症型変異を有する患者さんを対象とした治療法(エクソンスキッピング療法)の開発を行っており、今回の研究結果からこの治療法の開発への要望はさらに高まると考えられます」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)