ファンコニ貧血に対する治療標的の候補としてSLFN11遺伝子を特定

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. ファンコニ貧血は小児で発症の遺伝性疾患、DNAが傷つきやすい
  2. ファンコニ貧血細胞のDNAの傷の悪化にSLFN11が関わっていることが判明
  3. SLFN11がファンコニ貧血に対する治療標的になる可能性

DNA損傷に弱いファンコニ貧血、SLFN11遺伝子は影響するのか?

京都大学の研究グループは、小児で発症する遺伝性疾患「ファンコニ貧血」の治療標的になる可能性がある遺伝子として「SLFN11」を特定しました。

小児の遺伝性疾患であるファンコニ貧血は、血液が作れなくなってしまう再生不良性貧血や、白血病を発症しやすいという特徴があります。

一方、SLFN11という遺伝子から作られるタンパク質は、「ゲノム不安定化」という働きに関わっており、DNAが損傷した場合には、その損傷を悪化させてしまいます。この仕組みは、がん治療における抗がん剤の効果に有利に働くとして、注目されています。

ファンコニ貧血の患者さんの細胞は、DNA損傷に非常に弱く、血液のもととなる造血幹細胞が、体内で自然発生するDNA損傷によって死んでしまって数が減ったり、DNA変異が蓄積したりすることにより、症状が出るとわかっています。研究グループは、SLFN11遺伝子の発現が、造血幹細胞で高いことに気付き、SLFN11がファンコニ貧血の発症にどう影響するかを調べることにしました。

ファンコニ貧血細胞でSLFN11がDNA損傷を悪化させると確認

まず、ゲノム編集の技術を用いて、ヒト細胞からSLFN11を持たないファンコニ貧血細胞を作り出したところ、細胞の生存率が上昇しました。さらに詳しく調べたところ、SLFN11を持たない細胞は、DNAを損傷させても、その後損傷が悪化することはなかったことから、SLFN11はDNA損傷を悪化させていることがわかりました。この結果は、SLFN11 がファンコニ貧血に対する治療標的になる可能性を示すものです。

「今後の研究によって、ファンコニ貧血の病態解明だけでなく、がん細胞における抗がん剤治療抵抗性のメカニズム解明へとつなげていければと思います」と、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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