欧州で子どものX染色体連鎖性低リン血症治療薬として使われている「ブロスマブ」、成人も適応に

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 欧州で1歳以上のXLH患者さんに承認されていたブロスマブが、青少年と成人にも適応拡大
  2. 成人XLH対象の2つの臨床試験で、骨軟化症の症状の改善を示した
  3. 日本では、「FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症」の薬として2019年12月から販売されている

ブロスマブは腎臓でのリンの再吸収、腸管でのビタミンD産生を増加させる薬

協和キリン株式会社は、X染色体連鎖性低リン血症(XLH)の治療薬「ブロスマブ」(製品名:Crysvita(R)、クリースビータ)について、欧州で適応拡大が承認され、青少年および成人も対象となったことを発表しました。

XLHは、骨や筋肉、関節に異常をきたす遺伝性疾患で、遺伝性くる病の中では最も一般的な病気です。生命そのものを脅かすものではありませんが、患者さんの負担は生涯にわたり増え続け、生活の質を低下させる可能性があります。X染色体における遺伝的な要因から、体内のリンが尿から過剰に排泄されると同時に、腸からの吸収も阻害されるため、慢性的に血中リン濃度が低下します。また、歯槽膿漏、変形性関節炎、腱鞘炎、難聴などの症状が成人期にも発症することがあります。

ブロスマブは「FGF23」というタンパク質の作用を阻害する薬です(ヒト型抗FGF23モノクローナル抗体)。FGF23の過剰な作用を抑えることで、腎臓におけるリンの再吸収を増加させ、腸管におけるリンとカルシウムの吸収を促進するビタミンDの産生を増加させる狙いの薬です。この薬は、欧州では、X線写真で所見のある1歳以上のXLH児と、骨が成長中の思春期頃の子どもまでが対象とされていましたが、今回の適応拡大で成人のXLH患者さんも使用できるようになりました。

血中リン濃度を正常範囲に増加・維持、身体機能や可動性が時間の経過とともに改善

今回の適応拡大は、成人のXLH患者さんを対象とした第3相UX023-CL303試験と、第3相UX023-CL304試験の2つの臨床試験から得られたデータに基づいています。いずれの試験でも、ブロスマブの投与によって、血中のリン濃度を正常範囲に増加・維持し、骨軟化症に関連する偽骨折や骨折の治癒を促し、骨軟化症の症状が改善されることが示されました。その他、痛みやこわばりが軽減し、身体機能や可動性が時間の経過とともに改善することも示されました。

安全性について、注射部位反応や高リン血症、過敏症反応などが発生しましたが、これまでの臨床試験で得られた結果と一致しており、また治療に関連した重篤な有害事象は発生していません。

なお、この薬は日本では、FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の適応症で2019年9月に承認され、同年12月に国内販売が開始されました。これには、腫瘍性骨軟化症とX染色体連鎖性低リン血症が含まれます。(遺伝性疾患プラス編集部)

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