クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)の治療薬候補になる化合物を発見

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. CAPSは遺伝性の難治性全身炎症疾患
  2. 「インフラマソーム」という、炎症を起こす複合体が常に働くことが原因
  3. 独自の技術で、インフラマソームの働きを抑える化合物を発見、治療薬候補に

NLRP3異常で炎症が持続的に起こる難病、高価な治療薬しかない

愛媛大学の研究グループは、愛媛大学独自開発の技術を使って、クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)の治療薬候補化合物「KN3014」を発見しました。

CAPSは遺伝性の難治性全身炎症疾患の総称。日本には100人程度患者さんがいると推定されており、子どもで初めて発症する「孤発例」が多いのですが、親から遺伝する「家族例」の報告も増えています。

ヒトの細胞には、病原体など、細胞にとって危険な物質を察知するセンサーの役割をもつタンパク質が数種類備わっていますが、そのセンサーのうち、「NLRP3」というタンパク質は、反応すると仲間のタンパク質(ASCなど)と共に「インフラマソーム」という複合体を形成し、インフラマソームは、炎症を起こす物質である「インターロイキン-1β」(IL-1β)を放出します。

CAPSでは、NLRP3の設計図となる遺伝子に異常が起きています。それが原因で、危険がなくてもセンサーが常に反応して持続的にインフラマソームが形成され、全身に炎症が起こります。現在のところ、この病気の治療は、IL-1βの機能を抑える高価な抗体医薬などしかないため、廉価な薬の開発が望まれています。

炎症の原因となっている2つの分子の結合を阻害する化合物を特定

今回、研究グループは、同大独自の技術である「コムギ胚芽無細胞タンパク質合成技術」を用いることで、インフラマソームを構成するNLRP3とASCが結合できないように邪魔する低分子化合物「KN3014」を発見しました。KN3014は、CAPSの1つである「マックルウェルズ症候群」患者さんから採血して得られた白血球で、IL-1βの産生を抑制することが確認されました。また、IL-1βの産生を抑えることが確認された濃度で、KN3014は、白血球を傷害しないことも確認されました。

研究グループは、「今回の研究成果は、希少難病であるCAPSの治療薬の開発だけでなく、インフラマソームが関与する多くの炎症疾患や生活習慣病の治療薬への応用が期待されます」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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