「レスベラトロール」が筋ジストロフィーの治療に有効な可能性

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 筋ジストロフィー患者さんがレスベラトロールを服用する臨床試験が行われた
  2. 筋力の向上や運動機能の向上が認められた
  3. 現在は健康食品だが医薬品としてのレスベラトロールの開発が求められる

ぶどうポリフェノールのレスベラトロール、マウスで治療効果を確認済み

札幌医科大学を中心とした研究グループは、筋ジストロフィーの患者さん11人に「レスベラトロール」を服用してもらい、有効性や安全性を評価した第2相臨床試験の結果を発表しました。

筋ジストロフィー症は筋力が次第に衰えていく疾患で、さまざまなタイプのある遺伝性疾患です。寿命に影響するタイプもありますが、現在のところ、根治療法はありません。

ぶどうなどに含まれるポリフェノールのレスベラトロールは、健康食品として使われています。研究グループは以前に、デュシェンヌ型筋ジストロフィー症モデルマウスにレスベラトロールを投与し、血液中のクレアチンキナーゼ(筋の壊れを示す物質)の低下、筋力や筋の持久力の増加、心筋機能低下の抑制を確認していました。その結果を受け、今回、患者さんを対象に試験が行われました。

24週間レスベラトロールを服用した患者さんで運動機能や筋力が向上

試験の対象となったのは、12~46歳の筋ジストロフィー症(デュシェンヌ型、ベッカー型、福山型)の患者さん11人(男性10人、女性1人)。多くは症状がかなり進行しており、うち7人は歩行困難で車いすが必要な患者さんでした。

24週間にわたり、患者さんはレスベラトロールを服用し、有効性や安全性が評価されました。その結果、試験前と比べ、運動機能の向上(運動機能スケールMFMが10%向上)が確認されました。このような向上は通常の治療法ではこれまで観察されたことがないものでした。また、10人の患者さんで肩を挙げる筋力の増加(平均で4kgfから8.3kgfに増加)が観察されました。

副作用は、腹痛と下痢が一部の患者さんで認められましたが、下痢はレスベラトロールの用量を減らすと回復しました。その他、治療期間中に呼吸器系の感染症を発症した患者さんがいましたが、レスベラトロールの投与とは無関係と研究グループは判断しています。

健康食品から医薬品としての開発が求められる

今回、試験で使用されたレスベラトロールは健康食品であり、医薬品ではありません。今回の結果から、治療薬として用いるのであれば長期の服用が必須と考えられ、安全性のためにも、また、費用負担の面からも医薬品としてのレスベラトロール開発が求められます。

「少数の患者さんで効果があったことを示すことができましたが、今後、より大規模な臨床研究を行うことがレスベラトロールの実用化に必須と考えています」と、研究グループは述べています。

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