嚢胞性線維症の新たな治療薬候補「CaNDY」を発見

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 嚢胞性線維症はCFTR遺伝子の異常により発症する遺伝性疾患
  2. 「スプライシング異常」型の嚢胞性線維症に対する治療薬はまだない
  3. スプライシング異常を正常化させる化合物「CaNDY」を発見、新たな治療薬候補に

「スプライシング異常」型の嚢胞性線維症に有効な治療法を

嚢胞性線維症の新しい治療薬の候補として、低分子化合物「CaNDY」が発見されました。

嚢胞性線維症は、CFTR遺伝子の変異によって引き起こされる遺伝性疾患で、世界で7万人以上の患者さんがいるとされています。生まれて間もない頃から、気管支、消化管、膵臓などが粘り気の強い分泌液で詰まりやすくなり、細菌などの排除が妨げられて感染症リスクの上昇や組織機能の低下が生じます。

嚢胞性線維症の治療法は分泌物の除去や、消化補助剤等の対症療法しかなく、有効な遺伝子治療法もまだ確立されていません。近年、CFTRタンパク質の機能を補助する薬が発売されましたが、この薬は、嚢胞性線維症の一部の病型にしか効果がみられません。また、嚢胞性線維症のV型に分類される、「スプライシング異常」と呼ばれる仕組みで起きている病型では有効な治療方法がないことが課題となっています。

化合物「CaNDY」はスプライシング異常を正常化

今回、研究グループは、CFTR遺伝子のスプライシング異常に、「SRSF」と呼ばれる分子が関わっており、SRSFの働きを抑えるとスプライシングが正常に起こるようになることを発見しました。そこで、SRSFの働きを抑える物質を、700種あまりの化合物の中から探したところ、低分子化合物「CaNDY」が選定されました。さらに、嚢胞性線維症患者さんの細胞で、CaNDYがスプライシング異常を正常に戻すことも確認できました。

「同じようなメカニズムで発症する遺伝性疾患は他に数多くあることから、この治療薬は嚢胞性線維症だけでなく、他の疾患への応用も期待されます」と、研究グループは述べています。

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