「中條-西村症候群」の治療薬開発につながる物質を発見

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 中條-西村症候群では、MCP-1とIP-10というタンパク質が過剰に産生される
  2. 「CUDC-907」という物質がMCP-1とIP-10の産生を抑制すると発見
  3. CUDC-907は副作用の可能性からそのまま使えないが、新たな治療戦略に生かされる

対症療法のみで、まだ有効な治療薬がない中條-西村症候群

京都大学のiPS細胞研究所を中心とした研究グループは、中條-西村症候群(Nakajo-Nishimura syndrome:NNS)の病態を改善するのに効果的な化合物の特定に成功しました。

NNSは、幼少期から発熱や発疹を繰り返し、脂肪や筋肉の萎縮も併発する遺伝性疾患です。治療では、発熱や発疹を抑えるためにステロイドが用いられていますが、これは脂肪や筋肉の萎縮には効果がなく、副作用も重篤であるため、有効な治療薬の開発が望まれています。

治療効果が得られる物質「CUDC-907」を特定、新たな治療戦略に期待

研究グループは今回、NNS患者さん由来のiPS細胞を用いて、実験用の疾患モデルを作製。その疾患モデルを用いて、治療薬の探索を行いました。具体的には、「ハイスループットスクリーニング」という、大量の物質(化合物)をロボットなどの自動化技術により網羅的かつ効率的に評価する方法で、NNS患者さんの体内で過剰に産生されるタンパク質「MCP-1」と「IP-10」を効果的に抑制する物質を探しました。これらは、「ケモカイン」といい、炎症に関わるタンパク質です。

探索の結果、5,821の物質の中から、最終的に3つの物質を特定しました。これらは全て、「HDAC阻害剤」と呼ばれる種類の物質でした。その中でも、「CUDC-907」という物質について詳しく調べたところ、疾患モデルでMCP-1とIP-10の産生が確かに抑制されました。CUDC-907は、短期間では細胞毒性を示さなかった一方で、長期間では細胞の増殖を抑制し、副作用を生じる可能性が示されました。

「CUDC-907は、副作用が生じる可能性が示されたため、直接治療薬として用いることは難しいと考えられますが、今後、この物質による作用のメカニズムが詳細に解明されることで、NNSに対する新たな治療戦略を見出すことが期待されます」と、研究グループは述べています。

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