脳内の髄鞘が十分に形成されない神経難病
子どもの遺伝性神経難病である先天性大脳白質形成不全症の1つ、Pol III関連白質変性症(Pol III-associated leukodystrophies)について、新たな病気の仕組みが判明しました。
先天性大脳白質形成不全症は、脳の情報ネットワークの機能に重要な働きをする髄鞘が十分に形成されず、乳幼児期から運動や認知の発達に著しい遅れがみられる小児の神経難治性疾患。日本には220人ほど患者さんがいると推定されています。
先天性大脳白質形成不全症の1つに、Pol III関連白質変性症があり、「POLR3A」「POLR3B」「POLR1C」の3つの遺伝子を設計図として作られる酵素「RNAポリメラーゼIII(Pol III)」の機能不全がその原因と考えられています。しかし、なぜPol IIIの異常が脳の髄鞘の形成を妨げるのか、そのメカニズムはわかっていませんでした。
POLR1C遺伝子変異の患者さんを発見、「スプライシング異常」が影響の可能性
研究グループが今回、ある1人の先天性大脳白質形成不全症の患者さんについて、「エクソーム解析」という遺伝子解析を実施したところ、POLR1C遺伝子に病気の原因と考えられる変異を発見しました。
そこで、さらに詳しく解析をした結果、POLR1C遺伝子の変異により、「スプライシング異常」が引き起こされ、正常なタンパク質が作られない状態になり、これが病態に影響している可能性が示されました。
スプライシング異常とは、遺伝子からタンパク質が作られる流れの中で、「スプライシング」と呼ばれる重要な過程が正しく起こらず、本来除去されるはずの「イントロン」という部分(RNA上の塩基配列)が除去されないまま残ってしまっている状態のことを指します。
「今回の研究結果は、Pol III関連白質変性症の病態解明の第一歩であり、今後、POLR1C遺伝子変異を持つ患者さんの血液細胞由来のiPS細胞を樹立し、これを用いた解析を進めることで、今回明らかになったスプライシング異常が髄鞘化の障害を引き起こすメカニズムを解き明かすことを目指します」、と研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)
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