DMDにおける筋肉の持続的な炎症は、「細胞の老化」に関係?
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下、DMD)の病態悪化に「細胞老化」という現象が関わっている可能性があることが、東京大学の研究グループにより発見されました。
DMDは、X染色体上に存在するジストロフィン遺伝子の変異により引き起こされる遺伝性の難病で、筋肉の持続的な損傷や炎症が特徴です。
細胞は、ある回数分裂を繰り返すと「細胞老化」となり、細胞分裂抑制因子(p16遺伝子など)を発現して分裂をストップさせます。細胞老化は、炎症などのストレス環境に細胞がさらされることによっても引き起こされることが、近年、明らかになってきました。
DMDモデルラットは病態悪化で細胞老化、老化細胞を除去する薬で病態改善
今回、研究グループは、DMDモデルラットを用いて研究を行い、筋肉では病態悪化とともにp16遺伝子の発現増加と、細胞老化が引き起こされていることを発見しました。また、p16遺伝子が働かないようにしたDMDモデルラットも作製して様子を観察したところ、体重や筋力の改善、DMDの全身的な病態の改善が確認されました。
さらに、老化細胞を除去できる薬剤ABT-263をDMDモデルラットに投与したところ、老化細胞数が減少し、病態悪化に伴って見られた体重減少や筋力低下が抑制されました。
実際に患者さんの筋肉で細胞老化に関連する遺伝子発現が上昇
最後に、研究グループは、実際にDMDの患者さんの筋肉を調べ、p16遺伝子を含め細胞老化に関連する遺伝子の発現が上昇していることを確認しました。
この結果は、DMD患者さんも、ラットで見られたのと同じく、細胞老化が病態悪化に関与する可能性を示しています。「今後、細胞老化の抑制や老化細胞の除去がDMD患者さんでも有効であることが判明すれば、現在開発が進んでいる治療法に新たな選択肢を加えることで治療の幅を広げることが期待されます」と、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)