新たな遺伝性再生不良性貧血症「ADH5/ALDH2欠損症」を日本人で発見

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. ADH5およびALDH2の遺伝子変異により生じる再生不良性貧血症を新たに発見
  2. 体内でホルムアルデヒドが分解できなくなることが原因
  3. ファンコニ貧血の新たな治療アプローチにもつながる可能性

体内の有害物質の分解で重要なADH5とALDH2に変異

新たな遺伝性再生不良性貧血症「ADH5/ALDH2欠損症」が、日本人の患者さんで発見されました。再生不良性貧血は、血液中の白血球、赤血球、血小板のすべてが減少する疾患。遺伝性再生不良性貧血症は小児の重症難病で、白血病への進行も多いとされています。

病名にある「ADH5」は「ホルムアルデヒド」を分解する酵素。ホルムアルデヒド(ホルマリン)は、シックハウス症候群などで注目されていますが、体内でも自然に産生されます。体内に留まると、DNAなどを損傷し、毒性を示します。また、「ALDH2」は、アルコールによって体内でつくられる有害物質「アセトアルデヒド」を分解する酵素であり、この遺伝子に変異があるとお酒が飲めない体質となります。日本人を含む東アジア人の約半数でALDH2の遺伝子に変異があると知られています。

今回の研究から、ADH5とALDH2の両方の遺伝子に変異があると、体内のホルムアルデヒドが分解できなくなり、再生不良性貧血が生じることがわかりました。

生後の低身長・低体重、軽度の精神発達遅延などの症状

原因不明の再生不良性貧血の患者さんの血液を用いて、詳細に遺伝子配列を調べたところ、この2つの遺伝子に変異がある患者さんが7人見つかりました。症状は、生後の低身長・低体重、軽度の精神発達遅延、10代で再生不良性貧血を発症し、やがて骨髄異形成症候群や白血病へ進行し、骨髄移植が必要となる、というものでした。この病気は、「ADH5/ALDH2欠損症」と、名付けられました。

また、ADH5/ALDH2欠損症は、遺伝性再生不良性貧血として最もよく知られる「ファンコニ貧血」と症状がそっくりでした。ファンコニ貧血は、損傷DNAの修復ができないことが原因で起こっていますが、DNAが損傷する原因が、ホルムアルデヒドの可能性があると研究グループは考えています。もしそうであれば、今回の発見は、ファンコニ貧血の新たな治療法開発につながる可能性があります。

「ALDH2の変異とさまざまな疾患リスクについてはまだわかっていないことが多いため、今後十分な研究が必要です」と、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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