世界20か国以上で使われている12歳以上のHAE患者さんの発作予防薬
遺伝性血管性浮腫(HAE)の発作を抑制する「ラナデルマブ」という薬が、厚生労働省に対し製造販売承認申請されました。申請したのは、武田薬品工業株式会社です。
HAEは腹部、顔面、足、性器、手、のどなど、体のさまざまな場所に繰り返し浮腫発作(むくみ・腫れの発作)を引き起こす希少な遺伝性疾患です。世界中で5万人に1人がHAEの患者さんだと推定されており、日本には2,000~3,000人の患者さんが存在すると推定されています。しかし、日本ではこの病気に対する認知度が低く、実際に診断されているHAE患者さんは450人程度しかいません。
ラナデルマブは、「完全ヒト型抗ヒト血漿カリクレインモノクローナル抗体」というバイオ医薬品。血液中で発症に関与している物質「カリクレイン」に結合し、その濃度を引き下げる皮下注射薬です。2018年に米国で、12歳以上のHAE患者さんの発作予防薬として初めて承認されて以来、現在では20を超える国で製品名「TAKHZYRO(R)」として販売されています。
最大規模のHELP試験では顕著な発作抑制効果
今回の、日本での製造販売承認申請は、主にグローバル臨床第3相試験である「HELP試験(TM)」、臨床第3相「HELP OLE試験」、および、日本人患者さんでのラナデルマブの有効性と安全性を検証する臨床第3相試験の中間結果等に基づいて行われました。これらの試験において、ラナデルマブはHAE発作の予防的治療薬として有効性と安全性を示しました。
特に、125人のHAE患者さんが参加した、最大規模の無作為二重盲検プラセボ対照試験であるHELP試験では、HAE発作の1か月あたり平均発生回数は、プラセボ(偽薬)のグループと比較してラナデルマブ300mgを2週間に1回投与されたグループで87%低下し、4週間に1回の投与では73%低下しました。統計的に有意であることも示されています。
さらに、26週間(第0〜182日)の試験期間全体を通じて、発作が起こらなかった患者さんの割合は、ラナデルマブを2週間に1回投与では44%だったのに対し、プラセボでは2%でした。また、安定期間(第70〜182日)中に発作を起こさなかった患者さんの割合は、ラナデルマブを2週間に1回投与では77%だったのに対し、プラセボでは3%でした。
ラナデルマブ投与で起きた有害事象のうち、治療期間全体を通じて最も一般的だったのは注射部位疼痛(42.9%)、ウイルス性上気道感染(23.8%)、頭痛(20.2%)、注射部位紅斑(9.5%)、注射部位挫傷(7.1%)、および浮動性めまい(6.0%)でした。重症度は、ほとんど(98.5%)の場合で軽度または中等度でした。
承認後、プレフィルドシリンジとして患者さんに供給の予定
日本での製造販売承認申請は、日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)により審査され、PMDAの審査結果に基づき、厚生労働省が判断します。承認された場合、ラナデルマブはプレフィルドシリンジ(充填済み注射器)として日本の患者さんに供給される予定です。
同社日本開発センターの廣田直美所長は、「予測のできないHAE発作により日々困難な生活を強いられている日本の患者さんに、HAE発作の予防的治療薬であるラナデルマブを新しい治療選択肢として、少しでも早く届けられる日を心待ちにしています」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)