骨格筋に存在するSmpd3はDMD進行に関連する?
国立精神・神経医療研究センターの研究グループは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の病態やストレス反応に関わっているタンパク質を特定しました。DMDは、「ジストロフィン」という遺伝子の変異が原因で発症する進行性の筋肉の病気で、まだ根本的な治療法は確立されていません。
骨格筋に豊富に存在する「マイクロRNA」という物質のうち何種類かは、筋幹細胞の増殖・分化や筋肉の再生を制御しており、これらは、DMDの進行度合いに関連して増えたり減ったりしながら血液中に分泌されるという報告があります。マイクロRNAは、「エクソソーム」と呼ばれる小胞に包まれて、筋肉細胞内から血液中に分泌されます。そこで研究グループは、エクソソームの形成に関わるタンパク質「Smpd3」に注目。Smpd3は、骨格筋にも存在するものの、その骨格筋における働きや、DMDの病気の進行との関連はわかっていませんでした。
Smpd3欠損のDMDモデルマウスは病態・運動機能が改善
研究グループは、DMDモデルマウスでSmpd3タンパク質の設計図となる遺伝子を欠損させ、解析を行いました。その結果、過剰な炎症作用や筋肉細胞の細胞死などDMDで特徴的な筋肉に見られる病態が改善され、運動機能も改善しました。このことから、DMDの病態の進行にSmpd3が関与していることが示唆されました。また、DMDにおけるストレス反応にもSmpd3が関わっている可能性もわかりました。
今回の研究により、DMDが筋肉だけの病気ではなく、マイクロRNAが血液を介して全身を循環することによる全身的な病気である可能性が示されました。「Smpd3がどの組織・細胞でどのような機能によってDMD病態を制御しているのかが今後明らかになると、DMD病態の全貌を捉えられる可能性があります」と、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)