新たなSMA経口治療薬の治験、I型SMA乳児患者さんへ2年間治療後も効果維持を確認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 開発中のSMA経口治療薬「リスジプラム」の2年間投与の成績が発表された
  2. 対象は、I型SMAの乳児患者さん
  3. 治療開始2年後も運動機能や生存率改善維持などが確認された

治療開始24か月時点で93%が生存、83%が人工呼吸器の永続的使用不要

スイスのロシュ社は、開発中の脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬「リスジプラム」(製品名:Evrysdi(TM))について評価を行う臨床試験(第2/3相FIREFISH試験)を実施しています。対象は、乳児(生後1~7か月)のI型SMA患者さんです。同試験は、安全性評価を行うパート1と、用量の決定を行うパート2の、2つのパートから成っており、今回はパート2における、2年間の新たな成績が発表されました。

SMAは、乳幼児では最も頻度の高い、命に関わる遺伝性疾患。脊髄の運動神経細胞の変性によって筋萎縮や筋力低下を示す病気で、乳児期から小児期に発症するSMA患者さんの数は10万人あたり1~2人とされています。リスジプラムは、中枢神経系および全身のSMNタンパク質レベルを増加させるように創製された、経口投与が可能な薬で、現在臨床開発が進められています。

この臨床試験(パート2)に登録された患者さんは41人で、リスジプラムの投与を2年間受けました。解析の結果、治療開始24か月目で93%(41人中38人)の乳児が生存、人工呼吸器の永続的な使用が不要だった乳児は83%(41人中34人)で、治療を受けない場合の経過と比較して改善がみられることがわかりました。

また、経口で栄養摂取が可能な状態を維持できていた乳児は、24か月目で92%(38人中35人)、探索的な解析から、のみ込む力も同様に維持できていた(95%、38人中36人)こともわかりました。I型SMAは通常、治療を受けなければ、生後12か月以降には食事の介助が必要となります。

「最低30秒間支えなしで座位を保持」24か月目で44%

運動機能の評価では、最低5秒間支えなしで座位を保持できたのは、治療開始12か月目で29%(41人中12人)、24か月目で61%(41人中25人)。最低30秒間支えなしで座位を保持できたのは、12か月目で17%(41人中7人)、24か月目では44%(41人中18人)でした。

さらに、頭部を直立させることができる(12か月目:44%、24か月目:63%)、仰向けからうつ伏せに転がることができる(10%、44%)、補助により立位を維持することができる(5%、15%)という結果で、リスジプラムによる改善効果が示されました。

試験中に確認された主な副作用は、上気道感染(54%)、肺炎(46%)、発熱(44%)、便秘(29%)、上咽頭炎(17%)、気管支炎(15%)、下痢(15%)、鼻炎(12%)でした。また、重篤な有副作用は、肺炎(39%)および呼吸困難(7%)。休薬や治療中止に至った薬剤関連の有害事象は認められませんでした。(遺伝性疾患プラス編集部)

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