神経発達障害の1つで、FMR1遺伝子の異常が発症と関連
遺伝性の神経発達障害の1つである「脆弱X症候群」において、胎児期の脳内で起こっているどのような異常が病態につながっているか、その一部が解明されました。
脆弱X症候群は、男性1万人あたり1人程度の頻度で発症すると報告されている遺伝性疾患で、国の難病に指定されています。知的障害(精神遅滞)や自閉症のような症状を示し、大きな額、大きな耳、長い顔といった顔立ちの特徴があります。
X染色体にある「FMR1」という遺伝子の異常が、この病気の発症にかかわっています。この遺伝子からつくられるFMRPタンパク質(以下、FMRP)には、いろいろなタンパク質の量を調節する役割があります。正常なFMRPは大人の脳の神経細胞の正常な働きを助けていますが、胎児期の脳における役割はほとんど明らかにされていませんでした。
「mTOR経路」の異常な活性化が病態に関わる可能性
研究グループは、胎児期のマウスの脳の形成過程においてFMRPが量を調節しているタンパク質は何かを調べました。その結果、知的障害や自閉症など、たくさんのタンパク質が見つかりました。
その中には、細胞の分裂や増殖を制御する「mTOR経路」と呼ばれる伝達経路にかかわるタンパク質もありました。さらに調べたところ、FMRPが機能しないようにしたマウスでは、mTOR経路が異常に活性化されることが明らかになりました。この異常が脆弱X症候群を引き起こしている可能性が考えられるといいます。
「胎児期の脳の発生過程における脆弱X症候群発症の原因となる分子メカニズムの一端が解明されたことで、これまで未解明であった、脳の発生期の異常によって引き起こされる遺伝性発達障害の理解が一層進むことが期待されます」と、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)