レット症候群、脳の発生におけるMECP2の重要な役割とその仕組みを明らかに

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. レット症候群の原因遺伝子「MECP2」について詳しく研究した
  2. 患者さんの脳では、神経幹細胞から作られる細胞の種類や数が制御されていない可能性
  3. レット症候群の新しい治療法の開発にもつながる可能性

MECP2遺伝子の変異でなぜレット症候群は発症するのか?

九州大学を中心とした研究グループは、レット症候群の原因遺伝子「MECP2」について、脳の発生過程で果たしている重要な役割とその仕組みを明らかにしました。

遺伝性疾患であるレット症候群は、自閉症やてんかん、失調性歩行(ふらふらする、ぎこちない歩き方)、特有の手の動き(手もみ、手絞りなど)を主な特徴とする進行性の神経発達障害です。MECP2遺伝子の変異により発症することはわかっていましたが、その発症メカニズムについて詳しいことはわかっていませんでした。

正常なMECP2は神経幹細胞をニューロンに分化促進、アストロサイトへは抑制

研究グループは今回、レット症候群の発症メカニズムについて、マウスを用いて検討しました。その結果、MECP2遺伝子から作られるMECP2タンパク質は通常、脳の発生過程において、神経のおおもとの細胞(神経幹細胞)がニューロンへ分化するのを促進し、またアストロサイトというニューロンの機能を支持する細胞への分化は抑制していることが判明しました。

さらに詳しく調べたところ、MECP2は「miR-199a」というマイクロRNAを介して、脳の発達に重要な骨形成因子(BMP)シグナルを抑制することで、神経幹細胞の分化を制御していることもわかりました。

レット症候群ではアストロサイトへの分化増加、BMPシグナル阻害剤で改善

そこで、MECP2遺伝子に変異をもつレット症候群患者さんの細胞からiPS細胞を作り、さらにこのiPS細胞から脳オルガノイド(三次元組織)を作って、MECP2遺伝子の変異が脳に与えている影響を調べました。すると、レット症候群患者さんの脳では、BMPシグナルの亢進とアストロサイトへの分化増加がみられました。さらに、BMPシグナル阻害剤により、これらが改善できることも明らかになりました。

「この結果は、レット症候群の患者さんの脳では、神経幹細胞からニューロンやアストロサイトへの分化バランスがうまく制御されていない可能性を示しており、そのバランスの正常化はレット症候群の新しい治療法開発へとつながることが期待されます」と、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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