筋肉の先天性難病「中心核ミオパチー」、発症メカニズムの一端が明らかに

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 先天性ミオパチーは生まれながらに筋肉の構造に異常がある進行性の疾患
  2. 先天性ミオパチーの1つ「中心核ミオパチー」では、筋肉の「T管」形成が異常
  3. この異常につながる、2つのタンパク質とその作用が明らかに

筋組織の「T管」は筋細胞の深部までシグナルを伝達するために重要な役割

指定難病「先天性ミオパチー」の1つである中心核ミオパチーにおいて、筋肉(骨格筋)の収縮に必要な筋組織の構造である「T管」の形成異常が起こる仕組みが解明されました。

先天性ミオパチーは、生まれながらに筋肉の構造に異常があり、加齢とともに筋力が低下する進行性の疾患です。筋力低下の影響で、呼吸・嚥下障害や、発育の遅れなどを伴うことがあります。国内の患者数は1,000~3,000人と推定されており、根本的な治療法開発に向けた発症メカニズムの解明が急がれています。

人が手などを曲げる際、脳からシグナルが発信され神経細胞を介して伝達され、筋収縮が起こります。T管は、神経細胞からのシグナルを筋細胞の深部にまで伝える役割があります。中心核ミオパチーの患者さんではT管の形成異常が起こることがわかっていましたが、その詳細なメカニズムは明らかになっていませんでした。

中心核ミオパチーでは特定のタンパク質同士が相互作用できずT管が形成異常に

研究グループは、T管の形成が異常になる仕組みを解明するため、マウスの筋細胞を用いて、組織や細胞の動きを生きたまま解析できる顕微鏡などを用いて詳しく調べました。

その結果、細胞膜(細胞の表面を覆う膜)を「切る」機能を持つダイナミン2と呼ばれるタンパク質が、細胞膜を「曲げる」機能を持つBIN1というタンパク質と相互作用することで、T管が安定化することを発見しました。一方、中心核ミオパチーにみられる変異したダイナミン2では、細胞膜を切る活性が高まり、BIN1と相互作用せず、T管が正常に形成されなくなることがわかりました。

「研究成果は、中心核ミオパチーの早期診断法や治療法、創薬開発に役立つことが期待されます」と、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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