遺伝性骨髄不全症候群、遺伝子解析により「AMeD症候群」を新たに分類

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 遺伝性骨髄不全症候群のうちの一部の症例が「AMeD症候群」と新たに分類された
  2. ALDH2遺伝子とADH5遺伝子の機能が同時に失われることが原因と判明
  3. 各細胞に2つあるALDH2遺伝子が2つとも変異している方がより重症に

「造血不全、知能低下、低身長、小頭症」を示すIBMFSを新たに分類

遺伝性骨髄不全症候群のうち、一部の共通する特徴をもつものに対して、遺伝子解析をもとに分類が行われ「AMeD症候群」と名付けられました。

遺伝性骨髄不全症候群(IBMFS)は、正常な血液を産生することができない疾患群で、発症頻度が数万から数十万人に1人と極めてまれです。これまでに、ファンコニ貧血、先天性角化不全症、ダイアモンド・ブラックファン貧血などがIBMFSとして知られています。

研究グループは今回、「小児期に造血不全、知能低下、低身長、小頭症を示すIBMFS」の日本人患者さん8家系10人のゲノム解析を実施。さらに、複数の研究で得られてきた大勢の日本人のゲノム情報を合わせて詳しく解析することで、この10人に共通する遺伝子変異を突き止めました。そして、「小児期に造血不全、知能低下、低身長、小頭症を示すIBMFS」を、他のIBMFSと区別して、「AMeD症候群」と名付けました。

2つの遺伝子が同時に機能欠損すると起こる極めてまれな病気

今回、遺伝子解析をした結果、この病気は、1つの遺伝子が異常になって起こるのではなく、「ALDH2」と「ADH5」という2つの遺伝子の機能が同時に失われることではじめて引き起こされるとわかりました。このような例はとてもまれなのだそうです。

ALDH2は、アルコールを飲むと体内でつくられる有害物質「アセトアルデヒド」を分解する酵素。この遺伝子に変異があると、お酒に弱い体質になります。また、ADH5は、「ホルムアルデヒド」を分解する酵素。ホルムアルデヒド(ホルマリン)は、体内でも自然に産生されており、分解できずに体内に留まると、DNAなどを損傷し、毒性を示します。

また、研究グループは、患者さんの症状や病態を再現したモデルマウスの解析から、細胞に2つずつあるALDH2遺伝子のうち、1つ変異しているより2つとも変異している方がAMeD症候群は重症になることを明らかにしました。

日本におけるAMeD症候群の発症頻度は、1年間で数人程度と推定されています。「疾患発症の分子病態や発症機序についてはまだ不明なため、さらなる解析が必要です」と、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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