遺伝性痙性対まひ、病気の仕組みに関わるタンパク質の機能を解明

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 日本を含め遺伝性痙性対まひの中でも頻度の高いタイプの原因遺伝子は「SPAST」
  2. SPASTからつくられるタンパク質「スパスチン」について詳細に解析
  3. スパスチンのどの部分がその機能に関連しているかなどを明らかに

頻度の多い遺伝性痙性対まひの原因遺伝子「SPAST」を解析

自治医科大学は、遺伝性痙性対まひの原因遺伝子の1つ「SPAST」について詳しく研究し、その働きの細かい仕組みを突き止めました。

遺伝性痙性対まひ(spastic paraplegia;SPG)は、生まれつきので生じる遺伝性疾患。両脚の筋が突っ張り、自分で動かせないといった痙性対まひの症状が徐々に進行し、筋力低下をきたします。これまでに80以上の原因遺伝子が特定されています。大脳からの運動の指令が筋に伝わるまでの流れのうち、前半の中枢神経内の部分を担う経路を「錐体路」と呼び、後半の末梢神経の部分を担う方を「運動ニューロン」と呼びますが、遺伝性痙性対まひでは、錐体路に主な病変があるとされています。

遺伝性痙性対まひの中でも、spastic paraplegia type 4(SPG4)は、日本も含め世界で最も頻度が高いといわれています。SPG4の原因遺伝子は「SPAST」で、その遺伝子からつくられる「スパスチン」(spastin)というタンパク質は、細胞分裂や神経の軸索の伸長などの際に働いています。

3つのことが新たに判明

今回研究グループは、そのスパスチンについて、大きく3つのことを明らかにしました。1つは、スパスチンが細胞の核から細胞質に移動する際に関わる「NES」という部分(アミノ酸配列)を特定したこと、2つ目は、スパスチンが核に留まるためにリン酸化される部位を見つけたことです。3つ目は、スパスチンのアイソフォーム(同じ遺伝子から作られる、一部が少し異なるタンパク質)に関することです。スパスチンは、アイソフォームによって、相互作用するタンパク質が異なるのですが、スパスチンのNESは、アイソフォームごとに異なる機能に関与することがわかりました。

研究グループは「今回の研究成果は、SPG4だけではなく、遺伝性痙性対まひの病態解明に新しい知見を提供するものと期待されます」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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