希少な自己炎症性疾患の原因となる遺伝子変異を発見

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 肝硬変や角化異常を特徴とする希少な自己炎症性疾患の原因となる遺伝子変異を突き止めた
  2. 炎症反応を促すタンパク質の一つ「NLRP1」の遺伝子に変異があった
  3. NLRP1の異常で細胞からIL-18などの物質が過剰に出るために炎症が起こることを確認

肝硬変などを起こす希少疾患の遺伝子解析を実施

順天堂大学、東京大学、京都大学の共同研究グループは、肝臓に炎症を引き起こす肝硬変や、角質が異常に増える角化異常などの症状を特徴とする、まれな自己炎症性疾患の原因となる遺伝子変異を突き止めたことを発表しました。変異が存在していたのは、「NLRP1」というタンパク質を作り出す遺伝子でした。

自己炎症性疾患は、自己免疫性疾患や感染症などの原因が明らかではないにもかかわらず身体に炎症反応(身体に赤みや痛み、腫れ、発熱の症状を起こす病的な変化)が起こりやすくなる病気です。

自己炎症性疾患では、炎症を引き起こす作用を持つタンパク質が集まった複合体「インフラマソーム」と呼ばれる存在が注目されていました。インフラマソームの働きが活発になると、細胞から炎症を引き起こす「IL-1β」や「IL-18」といった物質が細胞の中から外に放出され炎症を引き起こしたり、細胞死を引き起こしたりします。インフラマソームに含まれるタンパク質の一つとして注目されているのが、NLRP1という分子です。NLRP1は、遺伝子変異が起こると皮膚の角質が異常に増える症状を現すようになると従来の研究で報告されていました。

このたび研究グループは原因不明の希少な自己炎症性疾患を対象として、NLRP1との関連について遺伝子解析を進めました。着目した自己炎症性疾患は、幼少期から手のひらの角質が増える掌蹠角化症、歯周病、関節炎のほか、血液中の赤血球や白血球が減る汎血球減少(「小児SLE(全身性エリテマトーデス)様兆候」と呼ばれます)の症状が見られます。さらに、肝臓に炎症が起きて硬くなり機能が低下する肝硬変が進むこともわかっています。

患者さんにNLRP1遺伝子変異の存在を確認

症状を示す患者さんのNLRP1の遺伝子を調べて分かったのは、「P1214L」というアミノ酸の置き換えが起こる遺伝子変異が存在することです。細胞を使った実験を行うと、遺伝子変異があることで細胞から「IL-18」という炎症を引き起こす物質が大量に放出されるようになることも確認できました。

その上で患者さんの血液を解析したところIL-18の活性化が認められ、肝臓の細胞でも同じくIL-18やIL-1βが放出されているとわかりました。NLRP1遺伝子の発現を抑えるとIL-18などの放出は低下しました。さらに、インフラマソームの活性化によって肝臓の線維化にもつながる可能性があると示されました。

研究グループは、今後同様な症状を示す患者さんではNLRP1の遺伝子変異による自己炎症性疾患を考える必要があると指摘します。診断や治療の方法の開発につながる可能性もあります。(遺伝性疾患プラス編集部 協力:ステラ・メディックス)

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