病気の原因である遺伝的異常「スプライシング」の問題に着目
京都大学の研究グループは、家族性自律神経失調症の治療薬候補となる物質「RECTAS」を発見し、その効果を動物で確かめることに成功しました。
家族性自律神経失調症は「IKBKAP」と呼ばれる遺伝子の変異が主な原因となることがわかっている遺伝性疾患。この遺伝子に変異があると、「ELP1」および「IKAP」と呼ばれるタンパク質がうまく作れなくなるのです。このために自律神経や感覚神経の発達に異常が起きるなどして、知覚のほか、腸の活動など非随意運動に異常が起こってしまいます。アシュケナージ系ユダヤ人という特定の人種で病気が多いと知られ、99.5%以上がIKBKAP遺伝子の異常によって起こることがわかっています。
このたび研究グループは、IKBKAP遺伝子の変異によって、遺伝情報に基づいてタンパク質が作られるときの「スプライシング」と呼ばれるプロセスに異常が起こる、というところに着目しました。詳しく調べたところ、この異常があると遺伝子の読み飛ばしが起こり、さらに詳しく見ると、スプライシングの過程に関わる「SRSF6」という別のタンパク質に問題が起こっていることを突き止めました。つまり、IKBKAP遺伝子に変異があると、SRSF6がうまく機能できなくなって、スプライシングが正しく行われなくなっていたのです。
研究グループは、このSRSF6の関わるスプライシングをうまく機能するように直す効果を持った物質を探索し、冒頭に述べた「RECTAS」という低分子化合物が効果的であることを確認しました。
タンパク質の機能を回復して遺伝的な異常を治す
こうして調べたところ、RECTASを用いることでSRSF6が正しく機能するようになり、ELP1およびIKAPというタンパク質が正常に機能することが分かりました。さらに、動物実験で調べたところ、マウスの感覚神経の細胞において、遺伝的な異常が治っていることも確認できました。
こうした結果から、今後、家族性自律神経失調症の治療につながる低分子化合物の開発ができる可能性があると考えられました。研究グループは、遺伝性疾患の新しい治療薬を作り出すためのヒントになると指摘してします。(遺伝性疾患プラス編集部 協力:ステラ・メディックス)