クリーフストラ症候群の治療につながる新たな発見

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 希少な遺伝性の精神神経疾患「クリーフストラ症候群」は根治療法が今のところない
  2. 病気のモデルマウスを用いた研究で、「GLP」というタンパク質を生後に補充すると症状が改善されることを発見
  3. 脳内の「ミクログリア」という細胞の活性化が病態に関与している可能性も発見

遺伝子の働きをうまく制御できずに行動異常につながる病気

理化学研究所と帝京大学の研究グループは、遺伝性精神疾患の一つ「クリーフストラ症候群(KS)」の脳機能に現れる異常が、生後の薬剤によって治療できる可能性があると発表しました。

クリーフストラ症候群は発達遅延や知能障害、自閉症様の症状などが確認される遺伝性の精神疾患です。原因となるのは、「エピゲノム制御」と呼ばれる遺伝子の働きを調節する仕組みの異常です。エピゲノム制御に異常があると、遺伝子が正常に働かずに正しくタンパク質を作れなくなるなどの問題が発生して、病気につながると考えられています。今のところ、クリーフストラ症候群に対する治療は限られており、根本的な治療は難しい状況です。

研究グループは、この病気を引き起こす原因遺伝子であり、遺伝子の働きのコントロールに関与している「ヒストンメチル化酵素」というタンパク質の一種「GLP」をコードするEhmt1遺伝子に着目しました。この遺伝子に異常を持つマウスを人工的に作り出して、病気のメカニズムを探り、さらには症状を改善させる方法も検討したのです。

酵素を補充すると症状の改善効果

こうして判明したのが、生後に減少するGLPを補充することで、活動量の低下や不安感の上昇といった行動異常を改善させることができるということです。GLPを補充してから時間が経過するにつれて行動異常が徐々に改善していくのが確認されました。

さらに病気のメカニズムを詳しく調べたところ、Ehmt1に異常を持つマウスの脳内では、「ミクログリア」と呼ばれる細胞の働きが活発になっていることが分かりました。こうした変化によって腫れや痛みなどを引き起こす炎症が引き起こされ、通常ならば神経細胞から伸びている突起「スパイク」が作られなくなっていると分かりました。結果として脳の病的な状態につながっていると考えられました。

今後、研究がさらに進むことで、病的な状態を解消するための治療法の開発に生かせる可能性も出てきそうです。(遺伝性疾患プラス編集部 協力:ステラ・メディックス)

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