呼吸筋力の低下を防ぐための専用装置
国立精神・神経医療研究センターは、同センターが開発した神経筋疾患を対象とした呼吸理学療法機器について、10月1日から提供開始したことを発表しました。
神経筋疾患においては多くの場合に、手足、のど、舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がやせて力がなくなって呼吸筋力の低下によって肺活量や咳をする力が低下します。このために呼吸筋力を保つために呼吸理学療法によってリハビリをすることが重要になります。
従来、こうしたリハビリの手法の一つとして、肺に強制的に空気を送り込んだ場合の肺が取り込める空気の量である「最大強制吸気量(Maximum Insufflation Capacity =MIC)」を測定することで肺に圧をかけてリハビリできることが注目されていました。この方法をさらに改善する形で、空気の流れを一方向にする弁を利用する「最大強制吸気量(Lung Insufflation Capacity=LIC)」が研究機関で実践されるようになっていました。呼吸能力が著しく低下していたり、気管切開をしていたりして肺に空気を送り込むのが難しい場合でも呼吸理学療法を可能とするものです。
さらに、国立精神・神経医療研究センターは2012年から国内メーカーのカーターテクノロジーズとLICを行うための専用機の共同開発を進め、2016年に「LIC TRAINER(R)」として製品化しました。気密性を高めたほか、一定圧力で解放される安全弁を備え、患者自身が空気をリークさせるための操作を可能としたものになっています。
肺に空気を送り込む際の安全性を高め、開発完了
今回はさらに安全性を高めるための機器の改良を実施しました。改良点は主に2つで、新たに可変式安全弁を付けることで安全性を高めたこと、消毒のために高圧蒸気滅菌器での滅菌を可能としたこととなります。肺に空気を送り込むときに圧力が強すぎると肺を傷つけるため、その安全弁をより強化しています。
同センターは改良版となる「LIC TRAINER 2」の開発を完了。2021年10月1日から提供開始となりました。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)