ALSの治療薬にニーマンピック病C1型の進行を遅らせる効果もある可能性

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. ニーマンピック病C1型(NPC1)は、脳の神経細胞が徐々に失われる遺伝性疾患
  2. NPC1モデルマウスでは、神経にグルタミン酸が蓄積していた
  3. グルタミン酸を抑えるALSの薬「リルゾール」でNPC1マウスを治療したところ、生存が延長

NPC1はプルキンエ細胞が徐々に失われて症状が進行

米国国立衛生研究所(NIH)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬である「リルゾール(Riluzole)」について、小児の希少遺伝性疾患であるニーマンピック病C1型(NPC1)の進行を遅らせる可能性があることがマウスの研究で示されたと発表しました。この研究は、国立小児保健発達研究所(NICHD)、国立ヒトゲノム研究所、NIH関節炎・筋骨格皮膚疾患研究所の共同研究として行われたものです。

NPC1は、細胞内でコレステロールを移動させる機能が低下することで、運動障害、肝臓や肺の疾患、嚥下障害、知的能力の低下などが起こり、命を落とす場合もある疾患です。NPC1で見られる運動障害の多くは、プルキンエ細胞として知られる脳の神経細胞が徐々に失われていくことで起きています。

モデルマウスにALS薬「リルゾール」投与で生存が12%延長

神経細胞を刺激する脳内化学物質であるグルタミン酸は、通常、神経細胞の表面に結合し、その役割を果たすと濃度が低下します。研究グループは、NPC1のモデルマウスでは、グルタミン酸が神経細胞の表面に結合した後に、うまく濃度が下がらないことを発見しました。高濃度のグルタミン酸は、細胞にとって有害です。そのため、研究グループは、グルタミン酸の蓄積がNPC1で見られる脳細胞の喪失につながっていると考えました。

リルゾールは、グルタミン酸が神経で放出されるのを阻害することにより、ALSの進行を遅らせる薬です。今回の研究では、NPC1のモデルマウスにリルゾールを投与したところ、未投与のマウスに比べて生存が12%長くなることがわかりました。研究グループは、リルゾールやこれに類似した薬が、NPC1の進行を遅らせる治療薬になり得ると考えています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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