褐色細胞腫・パラガングリオーマは家族歴がなくても4人に1人が遺伝性と明らかに

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 褐色細胞腫・パラガングリオーマの遺伝性について、日本初の大規模調査を実施
  2. 患者さんの3割が生まれつき病気の原因となる遺伝子変異を持つことを確認
  3. 家族歴がなくても4人に1人が病気の原因になる遺伝子変異を生来保有していたと判明

日本の実態把握のため、初の大規模な調査を実施

筑波大学を中心とした研究グループは、褐色細胞腫・パラガングリオーマの患者さんは、家族歴のない場合であっても4人に1人が生まれつき病気の原因となる遺伝子変異(病的バリアント)を保有していることを明らかにしたと発表しました。

パラガングリオーマは、副腎(腎臓の近くにあるホルモン分泌などの役割を持つ臓器)や傍神経節(副腎や大動脈のそばに存在する器官)から発生する腫瘍で、多くの場合、腫瘍がアドレナリンなどのホルモンを作り出すために高血圧や発汗などの症状が現れることが知られています。

パラガングリオーマの腫瘍は肺や骨などに遠隔転移することが多く、世界保健機関(WHO)は潜在的な悪性腫瘍と位置づけています。欧米の研究では遺伝性の割合が高いとされますが、日本の実態はよくわかっていませんでした。

そこで研究グループは、日本人のパラガングリオーマの患者さん370人を対象に遺伝子検査などを行って、原因となる遺伝子変異の有無を分析しました。

転移のリスクに関連した遺伝子変異も確認

こうして判明したのは、患者さんのうち病的バリアントを生まれつき持つ人が32.4%存在し、家族歴がない場合でも4人に1人の割合で同様に病的バリアントを生まれつき保有していることでした。病的バリアントを持つ場合は転移しやすい人が多く、特にSDHBと呼ばれる遺伝子の病的バリアントが存在する場合には転移性の腫瘍が36.8%を占めていました。

今回の結果を踏まえて研究グループは、パラガングリオーマの患者さんを診断した後に、病的バリアントの保有状況を調べることで腫瘍が転移するリスクを把握可能になるとして、手術後のフォローアップを適切に行うためにも実施する意義があることを指摘しています。さらに未発症の血縁者においてパラガングリオーマの早期発見や早期治療にもつながる可能性もあるとしており、欧米のガイドラインで推奨されているパラガングリオーマの患者さんを対象とした遺伝子検査の意義を裏付けていると説明しています。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)

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