従来知られていない骨格異常の組み合わせを示す病気
理化学研究所を中心とした研究グループは、新しい骨の遺伝性疾患である「Ikegawa型大理石骨病」を発見し、その原因遺伝子も突き止めたことを発表しました。
研究グループは骨や関節の遺伝性疾患を解明するために「骨系統疾患コンソーシウム」という組織を運営し、骨や関節の病気についてのデータを収集してきました。今回、この活動の中で従来知られていないタイプの大理石骨病を見つけました。この病気の特徴は骨格を撮影したX線写真から確認されました。具体的には、頭蓋骨の骨の厚みが増してくるほか、脊椎の骨濃度の上昇や、骨盤の辺縁が硬くなるなどの変化が見られるものです。
研究グループは、確認された骨格異常の組み合わせが見られる病気がこれまでに知られていない新しい骨の病気であると判断しました。そこで「Ikegawa型大理石骨病」と命名し、未知の原因遺伝子の分析を進めました。
破骨細胞の機能が低下する
研究グループは網羅的な遺伝子解析により、Ikegawa型大理石骨病の原因遺伝子としてSLC4A2遺伝子の変異が関与していることを突き止めました。SLC4A2遺伝子は、細胞膜に存在しているイオンチャンネルと呼ばれるタンパク質をコードする遺伝子です。このタンパク質は細胞の内外をつなぐ役割を持っており、細胞内への塩化物イオンの取り込みと、細胞外への炭酸水素イオンの排出を担っています。研究グループは、Ikegawa型大理石骨病においてSLC4A2遺伝子の変異により、こうしたイオンを出し入れする機能が低下していることを確認しました。
さらに研究グループは、SLC4A2遺伝子の変異によって骨の新陳代謝に必要となる破骨細胞が作られなくなることも確認しました。結果として研究グループは「骨を消化して減らす」という破骨細胞の機能が阻害され、異常に骨量が増したと判断しました。
研究グループは今回の研究をきっかけに破骨細胞の研究進展に加えて、希少疾患の治療法や予防法の開発にもつながる可能性があると見通しを説明しています。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)