遺伝性脳小血管病CADASILの医師主導治験が開始

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. ラクナ梗塞や血管性認知症の主な原因として指定難病CADASILの関与が考えられている
  2. 今回の臨床試験では、国産新薬「アドレノメデュリン」によりCADASILの治療を試みる
  3. 医師らが外部に頼らずに、自ら主導する体制で薬剤の効果を臨床試験で検討する

脳梗塞の原因にもなり予想以上に患者数が多い可能性もある遺伝性疾患

国立循環器病研究センターの研究グループは、遺伝性脳小血管病の一つであるCADASIL(皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症)の国産新薬アドレノメデュリン(AM)を用いた医師主導治験1例目の治験薬投与開始について発表しました。

CADASIL(皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症)は国の指定難病の対象疾病で(指定難病124)、大脳白質の病変を特徴とし、ラクナ梗塞をはじめとした脳梗塞や血管性認知症の原因になり得ることが知られています。これは最も代表的な遺伝性脳小血管病です。

原因遺伝子としてNOTCH3遺伝子がわかっており、変異のあるこの遺伝子をどちらかの親から受け継ぐと常染色体優性(顕性)遺伝形式で発症します。CADASILは多くの脳梗塞の原因になっていることが徐々に明らかになってきており、予想以上に多い病気である可能性が浮上してきました。

典型的なCADASILの患者さんでは、30歳以降に脳小血管病辺や脳血流低下が認められ、これによって大脳白質に病変が現れ始めます。さらに脳梗塞を繰り返すことで認知症や寝たきり状態も起こります。CADASILは一般の脳梗塞の再発予防に使われる抗血小板薬の効果が乏しい上に、認知症に対する薬もないため、いまだに治療法がないことが課題になっています。

今回、研究グループは52個のアミノ酸から成り立つAMをCADASILの患者さんに対して投与し、その効果を検討することにしました。製薬企業の実施する臨床試験とは異なり、研究グループは医師が自ら主導する形で検証を実施します。さらに、AMは循環器系の臓器で作られ、血管の拡張を促すなどの効果があります。少人数を対象としてかねて動物実験や細胞を使った実験において、AMが血管の新たな発生や炎症の抑制を促し、大脳白質病変や認知機能を改善させるなどの効果が示されてきました。

2022年1月に1例目の治験薬投与を開始

臨床試験では安全性と有効性が調べられることになります。AMは人の体にもともと存在するものであり、従来、脳卒中や心不全などで使われ、大きな有害事象が生じていないこともわかっています。

健常者を対象として安全性を調べる第1相試験は完了し、潰瘍性大腸炎やクローン病を対象とした臨床試験が行われています。さらに2022年1月13日からCADASILの患者さんを対象とした1例目の治験薬の投与を開始しました。

研究グループは、AMがCADASILに対して効果を発揮する可能性は高いのではないかと指摘しています。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)

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