病気の原因が不明で重症の赤ちゃん、原因の特定にゲノム解析が有用と判明

遺伝性疾患プラス編集部

  • 2022.04.11 公開 (最終更新: 2022.04.15)
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POINT

  1. 全国で診断が難しかった重症の赤ちゃん85人を対象にゲノム解析を行い半数で原因を特定
  2. 遺伝情報を構成するDNAの塩基の1、2個が変化したため病気になったケースが多かった
  3. 原因判明により不要な検査を避けたり、効果的な治療を選んだりすることが可能に

新生児集中治療室に入院する重症の赤ちゃんの1割は原因不明

慶應義塾大学を中心とした研究グループは、病気の原因がわからない赤ちゃんを対象に、遺伝情報を幅広く調べるゲノム解析を行ったところ、およそ半数で原因を特定することができたと発表しました。

研究グループによると、新生児集中治療室に入院する重症の赤ちゃんの1割程度で病気の原因が分からないことが課題になっていました。極めて患者数の少ない病気である可能性もあり、その際には経験の豊富な医師でも原因の特定は容易ではありませんでした。

そこで今回、研究グループは、8都府県、17の高度周産期医療センターから構成されるネットワークを作りました。その上で、2019年4月から2021年の3月までの2年間で、従来の検査方法では原因を決めることができなかった85人の重症の赤ちゃんを対象にゲノム解析を行うことで原因を突き止めることを試みました。赤ちゃんから1mLの採血をして、そこからDNAを抽出し、次世代シーケンサーと呼ばれる高速で遺伝情報を読み取ることができる機器を用いて分析しました。

原因の判明により効果的な治療が可能に

こうして、対象となった85人のうち、ほぼ半数に当たる41人で病気の原因を特定することができました。遺伝情報は約30億個の塩基で構成されるDNAから成り立っていますが、その中の1個や2個が通常とは異なる並びになっていたために病気になっている場合が多いこともわかりました。

研究グループによると、原因を特定できたことによって、原因の判明した41人のうち半数の20人では、検査や治療の方針が変更されました。筋肉や皮膚を切り取る検査を避けることができたほか、効果のある薬を使ったり、移植による治療を行ったりすることで救命できる可能性があると判明しました。

従来、赤ちゃんを対象として幅広く次世代シーケンサーを用いたゲノム解析は行われていません。研究グループは、生まれつき具合の悪い赤ちゃんに対して、もっとゲノム解析の恩恵が受けられるよう通常の保険診療の中で行えるようにしたいと述べています。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)

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