タンパク質が作られる際に重要なAIMP2に異常が起こり発症する病気
東京薬科大学の研究グループは、AIMP2という遺伝子の変異によって起こる先天性大脳白質形成不全症のメカニズムを解明したと発表しました。先天性大脳白質形成不全症は、発症頻度が20万~50万人に1人の希少難病で、神経細胞に重篤な障害が起きる一群の疾患です。
AIMP2と呼ばれるタンパク質は、細胞の中でさまざまなタンパク質が作られる際に重要な機能を担っています。AIMP2の遺伝子異常は先天性大脳白質形成不全症の原因の一つと考えられています。そこで今回、研究グループは、AIMP2遺伝子変異による先天性大脳白質形成不全症のメカニズムを調べるため、AIMP2遺伝子に変異を持った細胞を人工的に作りました。その上で、遺伝子変異によって細胞にどのような病的な変化が起こるのかを検討しました。
未成熟なAIMP2タンパク質が蓄積していた
こうして判明したのが、AIMP2遺伝子に変異があると、AIMP2に基づいて作られるタンパク質が未成熟な状態になるといことでした。正常な状態においては、AIMP2は細胞質に存在するのですが、未成熟なAIMP2タンパク質はゴルジ体に蓄積していました。ゴルジ体とは、細胞質に存在し、タンパク質の分泌などに関わっている小器官です。
AIMP2遺伝子に変異がある細胞は、未成熟なAIMP2タンパク質の蓄積によってストレスにさらされた状態になっていました。中でもキャスパーゼ-2と呼ばれるタンパク質分解酵素が異常な活性化を引き起こしていることが確認されました。結果として、脳のグリア細胞が正常に分化できなくなるといった問題が生じると考えられました。さらに研究グループは、キャスパーゼ-2の働きを抑えることで異常が改善することも確認しました。
今後、研究グループは、細胞で確認された異常を動物実験などによって詳しく検討する方針です。キャスパーゼ-2の抑制によって異常が解決したことから、先天性大脳白質形成不全の治療につながる発見であると研究グループは説明しています。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)