特徴的な顔立ちを持つ小児疾患の画像診断に役立てることも目指す
国立成育医療研究センターは、同センター職員に顔写真のデータ収集に協力してもらい、個人情報に配慮し、同意を得た上で、性別や笑顔などを検出できる人工知能(AI)の構築に成功したことを発表しました。今後、小児の先天性疾患の特徴的な顔立ちを判定するAI開発にも役立つと想定されています。
AI開発においては、ハードウェアやソフトウェアの開発に注目が多く集まります。その一方で、同センターによると、AIでの機械学習を行うための基礎的なデータ(教師データ)の重要性、それらの教師データの収集や教師データに対してそのデータの分類などの注釈を添えて、コンピューターで実行させるプログラムに学習させる手法(教師あり機械学習)、そのための正解となる注釈を付けていく作業(アノテーション)においては十分に理解されていないと言います。
同センターでは、職員にもこうしたデータやアノテーションの重要性を理解してもらうために、同意を得た職員を対象として、顔写真のデータ収集、解析を行い、実際のAI開発の一端に参加してもらうという取り組みを行いました。対象となったのは277人の計2,429枚の顔写真です。これらの画像に対して、性別や笑顔などのラベルを付けてもらいました。こうしてデータの収集やアノテーションまでを体験してもらうほか、特徴的な顔立ちを持つ小児疾患の画像診断に役立てることも目指しました。
今後のAI開発に指針を与える成果
今回のデータ収集によって、医学的、生物学的な応用にも配慮して姿勢が固定された画像を取得できました。通常、インターネットを利用して顔画像を収集することはできますが、より理想的なデータを集めることができました。
収集したデータに基づいてAIの構築を進め、集まったデータに基づいて、別の顔画像の判定を行ったところ、性別の認識精度は98.2%、笑顔の認定精度は93.0%となりました。
小児の先天性疾患は特徴的な顔立ちが見られることが多く、画像認識による診断が可能であると予想されています。希少疾患は対象人数が少ないため、大量のデータを必要とするAI開発の障壁になります。今回の研究から、AI構築に必要とされるデータ量の目安が得られたため、今後のAI開発に指針を与えてくれると同センターは説明しています。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)