43年間のデータを初めて分析
東京医科歯科大学を中心とした研究グループは、原発性免疫異常症に対する同種造血細胞移植の、これまでの国内全症例を初めて調べて、その分析結果を発表しました。この研究は、日本造血・免疫細胞療法学会の遺伝性疾患ワーキンググループ事業の一環として行われたものです。
原発性免疫異常症は、遺伝子の異常によって生まれつき免疫の機能に異常がある病気です。症状は幅広く、感染症にかかりやすくなるほか、自己免疫疾患やアレルギー、がんなどが起こりやすくなるといった特徴もあることが知られています。
中でも重症な人では造血細胞移植が行われています。造血細胞移植は、日本では1974年以降に重症複合免疫不全症(SCID)を中心に実施されており、2016年までに747例が移植を受けてきました。
このたび研究グループは、日本造血細胞移植データセンターの情報に基づいて、日本の43年にわたる移植を受けた症例について初めて分析しました。
新生児スクリーニングの重要性を再確認と指摘
SCIDの181例について調べたところ、最も成績がよいとされるHLAが一致した兄弟姉妹からの移植成績と、HLAが一致した臍帯血移植の成績はほぼ同等で、10年生存率はいずれも91%とわかりました。欧米では臍帯血輸血は治療成績が劣るとされていましたが、今回の調査で治療成績が同等と判明したため、兄弟姉妹がいない場合の代替手段として臍帯血輸血は有用だと考えられました。
また、SCID以外の原発性免疫異常症566例において、非血縁骨髄移植(10年生存率79%)はHLAが一致した兄弟姉妹からの移植(10年生存率81%)に次いで有用であることが確認されました。そのほか、日本で多く行われている臍帯血移植は再移植が多いことや、移植を受ける前に使われる薬の強さを弱めて副作用を抑える「強度減弱前処置」による移植成績も良好であることがわかりました。
早期診断や早期治療の有効性が明らかになったことで、研究グループは新生児スクリーニングの重要性が再確認されたと指摘しています。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)