家族性巣状分節性糸球体硬化症、ラミニンα5鎖遺伝子ヘテロ変異を持つ症例を初めて発見

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. ラミニンα5鎖遺伝子ヘテロ変異を持つ家族性巣状分節性糸球体硬化症を世界で初めて発見
  2. 同じ変異を持つマウスを作製し、若年発症タンパク尿や緩徐な腎機能低下などが起こることを確認
  3. 診断に応用できる可能性があるバイオマーカー候補も見出した

これまでヘテロ変異の症例は見つかっていなかった

大阪大学を中心とした研究グループは、ラミニンα5鎖遺伝子ヘテロ変異を有する家族性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)を発見したと発表しました。この遺伝子変異による症例はこれまでに見つかっていなかったため、世界初の発見になりました。今後、病態解明、診断、治療法の開発につながる可能性があります。

腎臓の機能が低下すると、透析治療が必要になることがあります。透析治療を受ける患者さんの増加などもあり、腎臓の病気は社会問題として認識されていますが、腎臓の病気については解明されていないものも多く存在しています。

腎臓は、血液をろ過して尿を作る臓器で、ろ過の機能は糸球体という構造が担っています。この糸球体には糸球体基底膜という膜があり、糸球体基底膜はフィルターの役割のほか、細胞の足場としての役割を果たす重要なものです。また、糸球体基底膜には、ラミニンα5鎖というタンパク質があり、これは足場を作るために重要であるとわかっています。

従来、ラミニンα5鎖の遺伝子が1対ある遺伝子の両方で変異を持つ「ホモ変異」の場合に、腎臓の病気を起こすことが確認されていました。一方で、1対ある遺伝子の片方だけに変異を持つ「ヘテロ変異」の場合には、腎臓の病気を起こすかはよくわかっていませんでした。

今回、研究グループはFSGSを伴う家族性腎疾患の患者さんの協力を得て、家族3名につき、タンパク質をコードしている遺伝子をすべて調べる全エクソームシークエンス解析を行いました。

タンパク質のアミノ酸が1か所置き換わる変異による病気の発症を確認

こうして研究グループは、この家族の解析で、ラミニン5α鎖遺伝子に、これまで見つかっていなかった、新たなヘテロ変異を発見しました。この遺伝子変異はV3687Mという、タンパク質を構成するアミノ酸の1か所が置き換わる変異でした。そこで、同じ遺伝子変異を持つマウスを実験的に作り、病気を発症するか調べました。結果として、若年発症タンパク尿や緩徐な腎機能低下、肺気腫性病変が起こることがわかりました。

また、腎臓の病変においてビンキュリンタンパク質というタンパク質の増加が確認され、この遺伝子変異を持った腎臓の病気を検査する際に、このビンキュリンタンパク質を調べることで診断の手掛かりになる可能性があるとわかりました。

研究グループは家族性腎疾患の新たな診断や治療法の開発につながることを期待しています。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)

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