家族介護者の健康管理について実態を調査
筑波大学を中心とした研究グループは、慢性の病気の患者さんを介護する家族(家族介護者)にアンケート調査を行い、家族介護者が自らの健康問題に対して医療や介護の専門職からケアを受けた経験や、市販薬などで対応するセルフメディケーションを行った経験について、その実態を調査し分析した結果を発表しました。
高齢化に伴い、日本では家族介護者の数が増加しています。介護の継続には介護者の健康状態も重要な要素ですが、多くの家族介護者は介護に対して、身体的、精神的、心理社会的なストレスや負担を経験している上、介護に追われる中で自分の健康管理をおろそかにしがちとされています。加えて、介護者自身も高齢で、慢性の病気を抱えながら介護しているというケースも増えています。
また、日常の健康問題を管理する上で、セルフメディケーションは有効な手段の一つですが、誤った薬剤の使用による有害事象などリスクも指摘されています。しかし、これまで家族介護者の医療的ケアやセルフメディケーションに焦点を当てた調査は限られていました。
在宅で療養する慢性の病気を患う患者さんは、医師、看護師、リハビリテーション職、薬剤師、ケアマネージャーなど複数の専門職から治療・ケア・支援などを受けており、家族介護者は、介護を通して、医療や介護の専門職とコミュニケーションをとることが多いと考えられます。研究グループは、「家族介護者のセルフメディケーション利用は、こうしたさまざまな専門職から提供されるケアの経験と関連するのではないか」、と仮説を立て、家族介護者自身が、専門職から受けたケアの経験とセルフメディケーションの実態を調査しました。
専門職との関わりが、介護者自身の医療機関受診と関連
研究グループは、茨城県に居住する慢性疾患で自宅療養を行う患者さんの家族介護者を対象として、無記名の郵送アンケート調査を実施しました。
アンケートでは、専門職から提供される支援、気遣い、助言などについて、患者さんや介護者へのケアをより良好と感じているかどうかについて、「J-IEXPAC CAREGIVERS」という尺度を使用して評価し、セルフメディケーションについては、過去14日間にOTC医薬品、サプリメント、健康食品などを使用したかどうかを質問しました。
欠損データを除いた合計750名の回答データ(平均年齢61.4歳、女性74.3%)のうち、家族介護者の3分の1がセルフメディケーションを行っていました。解析の結果、さまざまな専門職からより良いケアを受けていると回答している家族介護者は、セルフメディケーションを行わない傾向にあることが明らかになりました。
その背景として、研究グループは、家族介護者が患者さんのケアに関与する専門職と良い関係を築けていると感じられる場合には、介護者自身のことについても専門職に助言を求めたり、医療機関を受診したりしやすいのではないかと推察しています。
家族介護者のセルフメディケーションが、患者さんのケアに当たる専門職との関わりが影響を与えていることを示唆する貴重な知見であると研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)