先天性血栓性血小板減少性紫斑病、酵素補充療法薬がFDA優先審査へ

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)のうち、cTTPはADAMTS13遺伝子変異により発症する
  2. 現在の治療法は、重度の治療合併症を引き起こす可能性がある
  3. 今回FDAに申請が受理された薬は、cTTPに対する初のADAMTS13補充療法薬として期待

全身で急性症状・慢性症状を伴う血液凝固障害が現れる希少遺伝性疾患

武田薬品工業株式会社は、先天性血栓性血小板減少性紫斑病(cTTP)に対する酵素補充療法TAK-755について、米国食品医薬品局(FDA)に生物学的製剤承認申請(BLA)が受理されたと発表しました。なお、TAK-755の申請は当局により優先審査指定を受けています。また、同薬は、FDAよりcTTPに対する希少小児疾患(RPD)指定も受けているほか、既に、cTTPを対象としたファスト・トラック指定および希少疾病用医薬品指定も受けています。

cTTPは、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)のうち、ADAMTS13遺伝子変異により発症する希少遺伝性疾患です。ADAMTS13の活性が減少もしくは欠損することで、全身の細い動脈に血小板の血栓が生じて詰まります。特に脳、腎臓、冠状動脈で生じやすいとされ、全身で急性症状・慢性症状を伴う血液凝固障害が現れます。

ADAMTS13は、フォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand factor:VWF)を切断する酵素です。VWFには、血管内皮細胞と血小板、または血小板同士をくっつける役割があります。VWFを切断するADAMTS13の活性が減少もしくは欠損すると、大きなVWF重合体が血液中に生じ、血小板の血栓が多数できるという仕組みです。

現在のcTTP治療法は、血漿療法(血漿輸注または血漿交換)が中心です。血漿療法は時間がかかり、また、重度の治療合併症を引き起こす可能性があります。この治療合併症には、治療を制限せざるを得ないものも含まれます。

P3試験中間成績、現在の治療法と比較して血小板減少症事象発現率60%低減

TAK-755は、活性が減少もしくは欠損したADAMTS13酵素を補充する薬として開発中の遺伝子組換えADAMTS13タンパク質です。今後、もしTAK-755が承認された場合、cTTPに対する初めての遺伝子組換えADAMTS13(rADAMTS13)補充療法薬となります。

今回の申請は、cTTPの無作為化対照試験から得られた有効性、薬物動態、安全性および忍容性データ、継続試験から得られた長期の安全性と有効性のデータによるものです。臨床第3相試験の中間成績では、TAK-755が血漿療法と比較して、血小板減少症事象の発現率を60%(95%信頼区間:30%~70%)低減させることが示されました。また、治療と関連性がある有害事象が発現した被験者の割合は、血漿療法を受けている被験者47.7%、TAK-755が投与された被験者8.9%でした。

臨床第3相試験の中間解析については、今後の学会で発表予定だとしています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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