原因不明の高身長を引き起こす遺伝的要因
国立成育医療研究センターは、高身長症を引き起こす新しい遺伝性疾患を発見したと報告しました。
これまでに、成長ホルモンが過剰に分泌され、高身長となった患者さんの遺伝的な要因として、AIP遺伝子とGPR101遺伝子の異常が発見されていました。しかし、それらの遺伝子に異常が見られず原因不明とされる高身長の患者さんが多く存在していました。
研究グループは、過剰な成長ホルモン分泌により197.4cmの高身長となった女性患者さんについて遺伝学的解析を行い、同じ遺伝的背景を持つマウスを作製して解析を行いました。
成長ホルモン関連遺伝子と他の遺伝子が異常に結合
遺伝学的解析の結果、20番染色体に752kbの大きさの小さな欠失(染色体の一部が消失していること)が発見されました。その部分を解析したところ、欠失によって、成長ホルモンを放出させるホルモンの設計図であるGHRH遺伝子に、別な遺伝子であるTTI1遺伝子が結合していることが明らかになりました。TTI1遺伝子は、全身の多くの臓器で働く遺伝子です。そのため、異常な結合によって、GHRHが本来働かないような臓器でも働くようになり、過剰な成長ホルモンの分泌につながったのではないかと推測されました。
研究グループが、この20番染色体の752kb欠失を持つマウスをゲノム編集によって作製したところ、マウスは患者さんと同じような過成長を示し、この欠失が疾患の原因であることが確認されました。
研究グループは、この研究成果は原因不明の高身長症の診断に役立つだけでなく、ホルモン過剰産生によって引き起こされる他の疾患の理解にも役立つと期待される、と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)