指定難病TTPの1種cTTP、ADAMTS13遺伝子変異により発症
武田薬品工業株式会社は、「ADAMTS-13(遺伝子組換え)」(開発コード:TAK-755)について、先天性血栓性血小板減少性紫斑病(congenital thrombotic thrombocytopenic purpura:cTTP)を予定される効能または効果として日本で製造販売承認申請を行ったと発表しました。
血栓性血小板減少性紫斑病(以下、TTP)は、厚生労働省の指定難病対象疾病です。cTTPはTTPの一種で、ADAMTS13遺伝子変異により発症する希少遺伝性疾患。ADAMTS13は、血管内皮細胞と血小板・血小板同士をくっつけるフォン・ヴィレブランド因子(VWF)を切断する役割を持ちます。cTTPでは、ADAMTS13活性が減少もしくは欠損するために、血管内で血小板の凝集塊(血小板血栓)が多数でき、末梢の細血管が閉塞されます。これにより、溶血性貧血と血小板低値(血小板減少症)などさまざまな症状が現れます。
国内のcTTP患者さんは、110~160人と推定されています。奈良県立医科大学輸血部が集積している血栓性微小血管症レジストリには、ADAMTS13活性が10%未満でTTPと診断される症例が725例登録されており、そのうち69例がcTTPです(2021年時点)。現在、cTTPの治療薬として承認された薬剤はなく、急性症状の治療または予防には新鮮凍結血漿が汎用されています。
ADAMTS-13、欠損または欠乏したADAMTS13酵素を補充
今回、日本で承認申請されたADAMTS-13は、開発中のiTTP治療薬。欠損または欠乏したADAMTS13酵素の補充により、症状の改善が期待されています。米国食品医薬品局(FDA)より先天性、後天性、特発性および続発性を含むTTPの治療と予防に対して、欧州医薬品庁(EMA)よりTTPの治療に対して、また厚生労働省よりTTPに対して希少疾病用医薬品指定を受けています。また、遺伝性(先天性)ADAMTS13欠乏症の患者さんに対するTTPの急性症状の治療、予防および定期予防に対してFDAよりファスト・トラック指定を受けています。
今回の承認申請は、主にcTTP患者さん(日本人5名を含む)を対象としたグローバル第3相臨床試験「281102試験(NCT03393975)」と第3b相臨床継続試験「TAK-755-3002試験(NCT04683003)」の中間解析結果に基づくものです。ADAMTS-13は、これらの試験により、cTTP治療薬としての有効性・安全性が評価されました。(遺伝性疾患プラス編集部)