日本人の遺伝差別に関する意識調査、結果公表

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 遺伝情報による差別の経験、差別防止の罰則を伴う法律に関する意識について日本の一般市民を対象にインターネット調査を実施
  2. 全体の3%が、自身や家族が遺伝情報による差別的な取り扱いを受けた経験があると回答
  3. 7割以上が「法規制は必要」と回答、最多は遺伝情報の第三者への同意のない提供・転売に対する法規制

日本の一般市民対象に遺伝情報による差別や法規制への意見を調査

東京大学医科学研究所の研究グループは、遺伝情報による差別防止に関連した日本の政策を概観するとともに、一般市民を対象に日本で遺伝情報による差別を受けた経験や、差別防止のための罰則を伴う法律に関する意識などについてのインターネット調査を実施しその結果を報告しました。

遺伝情報による差別は、ヒトに対する遺伝学研究において倫理的・法的・社会的課題の古典的な事例ですが、北米や欧州と比較すると、東アジアでは議論や研究はあまり行われていません。2000年、日本政府は「ヒトゲノム研究に関する基本原則」を発表しましたが、研究グループは、その後の数十年間、遺伝情報による差別防止に向けた施策は進展していなかったと指摘しています。2023年、「ゲノム医療法」が法律として成立し、遺伝情報による差別を防ぐ施策形成の第一歩となると期待されています。

研究グループは、日本の一般市民を対象に、2017年と2022年に遺伝情報による差別や不適切な利用を防ぐための法規制のニーズに関して、意識調査を実施しました。

同意のない遺伝情報の提供・転売に法規制を求める意見が多い

遺伝情報による差別的な取り扱いを受けた経験の設問では、2017年、2022年ともに、回答者の約3%が、自身または家族が何らかの遺伝情報による差別的な取り扱いを受けた経験があると回答しました。

また、遺伝情報の利用に関する利点についての設問では、遺伝情報が病気の予防に役立つと思うと回答した人の割合は、2017年は65%、2022年は69%となり増加していました。

一方で、遺伝情報の利用に関する懸念についての設問では、遺伝情報の不適切な取り扱いや、遺伝情報による差別の懸念があると回答した人の割合は、2017年よりも2022年で減少傾向となっていました。

遺伝情報の不適切な利用および遺伝情報による差別に対する法規制のニーズについての設問では、2017年は71%、2022年は75%と7割以上の回答者が何らかの法規制が必要であると回答していました。同意なく遺伝情報を第三者に提供・転売することに対する法規制を必要とする回答が最も多いことがわかりました(2017年:57%、2022年:63%)。

研究グループは、日本における遺伝情報による差別の法規制について市民の意識を初めて明らかにした、と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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