厚生労働省の希少疾病医薬品指定を経て、1月に承認取得
アンジェス株式会社は4月17日、ゾキンヴィ(一般名:ロナファルニブ)について、乳児早老症であるハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)とプロセシング不全性プロジェロイド・ラミノパチー(PL)の治療薬として薬価基準に収載されたことを発表しました。同社は5月中の販売開始に向け、準備を進めるとしています。
ゾキンヴィは、米国ではEiger BioPharmaceuticals Inc.(以下、アイガー社)が2020年11月に承認を得て、販売されています。その後、アンジェス社が2022年5月に日本における独占販売契約をアイガー社と締結。日本では厚生労働省の希少疾病医薬品(オーファン・ドラッグ)の指定を経て、2024年1月18日に承認を取得していました。
深刻な成長障害・動脈硬化促進などの早老症状が現れる希少疾患
HGPSとプロセシング不全性PLは、希少な遺伝性の早老症。年齢が若い頃から、死亡率が加速度的に上昇します。HGPSは、LMNA遺伝子の点突然変異により、ファルネシル化された変異タンパク質のプロジェリンが生成されることにより、発症します。ファルネシル化とは、タンパク質に行われる修飾の一種です。プロセシング不全性PLは、LMNAやZMPSTE24遺伝子の変異により、プロジェリンに類似したファルネシル化タンパク質が生成され、老化が促進します。
いずれの病型も、深刻な成長障害、強皮症に似た皮膚、全身性脂肪性筋萎縮症、脱毛症、関節拘縮、骨格形成不全、動脈硬化の促進などの早老症状が現れます。心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患により若年期に亡くなるとされ、HGPSの平均年齢は14.5歳と報告されています。
臨床試験ではHGPS患者さんの死亡率72%減、平均生存期間4.3年延長
ゾキンヴィは、HGPSとプロセシング不全性PLの小児・若年成人の患者さんに対し、ファルネシル化された変異タンパク質(核の不安定化と早期老化を引き起こす)の蓄積を阻害することが期待されています。
臨床試験の結果、HGPS患者さんで死亡率を72%減少させ、平均生存期間を4.3年延長させました。多くの患者さんが10年以上にわたってゾキンヴィによる治療を継続しています。最も多く報告された副作用は、消化器系(嘔吐、下痢、悪心)で、そのほとんどが軽度または中等度(グレード1または2)でした。なお、同社では、日本国内で同剤の使用が見込まれる患者さんは数名程度と見込んでいるとのことです。
遺伝学的検査の実施体制整う、診断から治療までを支援
今回の薬価基準への収載を受けて同社の山田英代表取締役社長は「日本においては有効な治療薬がないHGPS患者の方々、プロセシング不全性PL患者の方々にこの薬を一日でも早くお届けできるよう、準備を進めてまいります。また、アンジェスクリニカルリサーチラボラトリー(ACRL)において、HGPS並びにプロセシング不全性PLに関する遺伝学的検査を実施できる体制を整えました。これにより当社は、HGPS並びにプロセシング不全性PLに関して診断から治療までを支援してまいります」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)