家族性骨形成不全症、TRIC-B遺伝子変異により引き起こされる低身長のメカニズムを解明

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. TRIC-B遺伝子欠損により発症する骨形成不全症の低身長の病態機序は不明だった
  2. 疾患モデルマウスの大腿骨を解析、骨の伸長が抑制される詳細な分子メカニズムが判明
  3. 骨形成不全症における低身長の診断や治療への応用に期待

骨折しやすいほか、低身長や成長障害なども引き起こされる病気

京都大学の研究グループは、TRIC-B遺伝子が欠損することによって発症する家族性骨形成不全症の症状の一つである低身長の病態メカニズムを解明したと発表しました。

骨形成不全症は指定難病対象疾病で、この病気では骨が脆く骨折しやすいほか、低身長や成長障害などが引き起こされます。骨形成不全症の原因となる遺伝子はすでに複数知られていますが、TRIC-B遺伝子の変異がヒト家族性骨形成不全症の原因となることが複数の研究グループから報告され、その病態機序が注目されています。

TRIC-B遺伝子は、小胞体という細胞内小器官に2種類存在する「TRICチャネル」タンパク質のうちTRIC-Bの設計図となる遺伝子です。小胞体は、カルシウムイオンを持続的に放出していますが、TRICチャネル/TRIC-Bはその放出に関わっています。

研究グループは以前、TRIC-B遺伝子を欠損した骨形成不全症モデルマウス(TRIC-B欠損マウス)において、骨を作る骨芽細胞のカルシウムイオンシグナル異常とI型コラーゲンの分泌不全が引き起こされ、その結果、骨密度が低下するというメカニズムを明らかにしていました。TRIC-B欠損マウスでは低体長も観察されていましたが、これまでのところTRIC-B遺伝子変異によって低身長や成長障害などの症状が引き起こされる原因については不明でした。

そこで今回、研究グループは、骨を伸ばす機能を担う成長板軟骨細胞においてもTRIC-Bが細胞内のカルシウムイオンシグナルを介し何らかの機能を担っているのではないかと考え、解析を行いました。

成長板軟骨細胞でカルシウムイオン放出が障害されコラーゲンが異常蓄積

まず、TRIC-B欠損マウスが生まれる直前(胎児)の大腿骨を調べたところ、骨端部分の軟骨組織が、通常のマウスよりも全体的に小さく、細胞外基質(細胞外マトリックス)の量が減少していることがわかりました。そして、ごくまれに細胞質が大きく膨らみ細胞核が濃縮したような特徴的な細胞死を起こしている細胞が観察されました。また、軟骨組織で細胞外マトリックスの主成分であるII型コラーゲンが過剰に細胞内に蓄積していることも明らかになりました。

さらに解析を進めたところ、TRIC-B欠損による小胞体への不良なコラーゲン蓄積が小胞体ストレス応答経路を活性化させ、軟骨細胞死が誘導されることが示唆されました。さらに、成長板軟骨細胞と呼ばれる、骨の成長に重要な細胞においてTRIC-B欠損によってカルシウムイオンの放出が障害され、細胞内のカルシウムイオン濃度が常に高くなっていることがわかりました。その結果、成長板軟骨細胞ではコラーゲンなどが細胞外マトリックスへ分泌されることが障害され、骨の伸長が抑制されて低身長へ至ることが明らかになりました。

研究グループは、今回の研究成果は骨伸長の分子メカニズムを理解するための基礎研究に貢献するだけでなく、他の遺伝子変異を原因とする骨形成不全症でも共通した分子機序が観察される可能性もあり、骨形成不全症によって引き起こされる低身長の診断や治療への応用も期待される、と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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