先天性難聴、15万人の出生児を対象に大規模調査を実施し実態を明らかに

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 先天性難聴の頻度や原因別の割合などについて、国内の報告はなかった
  2. 長野県で10年間に新生児聴覚スクリーニング検査受けた15.6万児対象に大規模調査実施
  3. 出生1,000人あたり1.62人の発症頻度、頻度の高い原因も判明

日本の出生児における先天性難聴の頻度は?

信州大学を中心とした研究グループは、生後数日での「聞こえ」の検査である「新生児聴覚スクリーニング検査」を受けた約15万人を対象に大規模な調査を行い、生まれつきの難聴(先天性難聴)の頻度や原因を明らかにしたと報告しました。

先天性難聴は、新生児聴覚スクリーニングが2000年に国内で導入されたことで早期発見が可能となってきただけでなく、遺伝子解析技術の進歩によって診断率も大幅に向上してきました。しかし、出生児全体における先天性難聴の割合や、新生児聴覚スクリーニングで「要精査」となった子どもが実際に難聴と診断される割合、難聴の原因別の頻度などの調査報告は海外でも少なく、日本での報告はほとんどありませんでした。

研究グループは、長野県で2009年〜2019年に生まれた15万6,038児のうち、新生児聴覚スクリーニング検査を受けた15万3,913児を対象に大規模な調査を行い、10年間のデータをまとめました。

両側性難聴は遺伝性、一側性難聴は蝸牛神経形成不全が高頻度

その結果、新生児聴覚スクリーニングで要精査となったのは661人(全体の0.43%)で、要精査の人のうち249人が最終的に難聴と診断され、診断された249人のうち、130人が両側性難聴、119人が一側性難聴でした。これらの結果から、先天性難聴は出生1,000人あたり1.62人、両側性難聴が0.84人、一側性難聴が0.77人の発症頻度であることがわかりました。

また、これらの先天性難聴の原因を調べるため、CTなどの画像検査、遺伝子解析、先天性サイトメガロウイルス感染症検査などを実施し、両側性難聴は遺伝性、一側性難聴は蝸牛神経形成不全が最も頻度が高く、難聴の程度が重い高度難聴ではそれぞれ半数以上を占めることがわかりました。また先天性難聴の原因の一つである先天性サイトメガロウイルス感染症による難聴は両側性、一側性どちらも約4〜5%であることもわかりました。

これらの調査は、海外の報告と比較しても非常に大規模であり、今回の研究成果は新生児聴覚スクリーニング検査にて要精査、もしくはその後に難聴と診断された患者さん、ご家族への重要な情報提供となると考えられます。

研究グループは、今後、より早期に適切な検査や介入が行われるよう小児難聴医療の向上に努めるだけでなく、新規難聴医療の開発を進めていく、と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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