毛孔性紅色粃糠疹5型、全身の角化性紅斑や激しいかゆみ・痛みなどの症状
名古屋大学は、世界で初めて毛孔性紅色粃糠疹(もうこうせいこうしょくひこうしん)のモデルマウスを作製し、発症メカニズムに関する新たな知見を報告したと発表しました。
毛孔性紅色粃糠疹は、全身の角化性紅斑を特徴とする希少疾患です。角化性紅斑とは、皮膚の角層が異常に厚くなることで、ガサガサし、皮膚が赤くなる症状です。毛孔性紅色粃糠疹は、発症時期や原因などから6つの病型に分類されます。その中でも5型は、幼少期から顔面、手の平、足の裏を含めた全身の角化性紅斑、多くのの鱗屑(りんせつ:皮膚表面の角層細胞がはがれ落ちたもの)、激しいかゆみ、痛みなどの症状が現れ、傷口からの細菌感染なども生じます。
これまでに研究グループは、5型の原因としてCARD14 遺伝子の変化を明らかにしていました。一方、その発症メカニズムは不明な点が多く、有効な治療法は確立していません。
また、毛孔性紅色粃糠疹は診断が難しいとされています。その理由の一つとして、乾癬という皮膚疾患と症状が似ていることが挙げられます。症状は似ているものの、毛孔性紅色粃糠疹と乾癬では治療方針や疾患の経過が異なります。そのため、両者を正しく区別して診断することが重要です。
毛孔性紅色粃糠疹5型モデルマウス作製、病態解明・治療法開発に期待
今回、研究グループは、毛孔性紅色粃糠疹5型の原因であるCARD14遺伝子変異をマウスに導入し、モデルマウスを作製しました。モデルマウスの皮膚の遺伝子発現を網羅的に調べたところ、免疫細胞が分泌するIL-17と皮膚の角化細胞が分泌するIL-36が病態に重要だとわかりました。IL-17とIL-36は、炎症に強く関わるタンパク質です。
また、毛穴の外毛根鞘細胞、表皮の顆粒細胞、真皮の線維芽細胞という細胞で、炎症に関する多数の遺伝子の発現がよく見られました。これらの皮膚の細胞と免疫細胞が相互に刺激し合うことで、症状につながっていると考えられます。
続いて、毛穴の外毛根鞘細胞ではIL-17の刺激を受け取るタンパク質(受容体)や、角化亢進に関与する遺伝子(Krt16、Pla2g2f)の発現が亢進していました。毛孔性紅色粃糠疹の特徴の一つである毛穴の角化に、これらが関与していると考えられます。IL-17を抑える治療薬を投与した結果、モデルマウスの症状は改善しました。
最後に、乾癬患者さんや乾癬のモデルマウスで発現が亢進している遺伝子(S100a7、Krt17)の発現が、毛孔性紅色粃糠疹モデルマウスの皮膚では正常であることが判明。これらの遺伝子発現が、毛孔性紅色粃糠疹と乾癬を区別するマーカーとなる可能性が示されました。
今回作製されたモデルマウスを利用して、5型をはじめとした毛孔性紅色粃糠疹のさらなる病態解明や治療法の開発が進むことが期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部)