患部が腫れて痛む「フレアアップ」から異常な骨化へ進行する疾患
京都大学は、進行性骨化性線維異形成症(FOP)においてBMP-9というタンパク質が症状の悪化に関わることを明らかにしたと発表しました。
FOPは、ACVR1遺伝子の変異が原因となり、子どもの頃から全身の筋肉やその周囲の膜、腱、靭帯などが徐々に硬くなって骨に変わる疾患。手足の関節の動く範囲が狭くなったり、背中が変形したりするなどの症状が現れます。
この病気では、最初に筋肉などの組織中に存在する間葉系間質細胞(筋肉や骨などに含まれる幹細胞の一種)の増殖が起こり、患部が腫れて痛む「フレアアップ」という状態になります。その後、本来は骨ができるはずのない場所が骨に変わる「異所性骨化」に進行します。今回の研究では、FOPの進行を早期に抑える治療法開発のため、異所性骨化の前段階であるフレアアップの仕組みを解明することを目指しました。
BMP-9がFOPの進行に関わることを発見
まず、研究グループはFOP患者さん由来のiPS細胞から間葉系間質細胞を作製し、この細胞を活発に増殖させる作用を持つタンパク質を探索しました。その結果、「BMP-9」というタンパク質に強い増殖作用を認めました。
次に、FOPの症状を再現したモデルマウスを用いて、生体でもBMP-9が細胞を増殖させるかを調べました。その結果、モデルマウスにBMP-9を投与すると、投与した部位に腫れが生じ、間葉系間質細胞が増えていることが確認されました。
FOPの異所性骨化は筋肉の損傷が原因になりますが、BMP-9は傷ついた組織の治癒や再生が起きている部位で作られることが知られています。そこで、筋肉に壊死を引き起こす薬物を用いてモデルマウスの筋肉に損傷を与えたところ、フレアアップから異所性骨化へと進行する過程でBMP-9が持続的に組織中に存在し、間葉系間質細胞の増殖を促していることが明らかになりました。
BMP-9を抑えることで異所性骨化を軽減できることをマウス実験で確認
さらに、研究グループはBMP-9を欠失させたFOPモデルマウスを作製し、BMP-9が存在しない場合に異所性骨が形成されるかを調べました。BMP-9が体内で作られないモデルマウスに薬物で筋肉の損傷を誘導したところ、BMP-9が機能しているモデルマウスと比べて異所性骨の形成が抑制されました。また、BMP-9の働きを抑える抗体を投与することによって、同様に初期の病変を抑えられることがわかりました。
今回の研究から、フレアアップの段階でBMP-9が患部の細胞を異常に増殖させ、最終的に骨化につながることがわかりました。加えて、マウス実験でBMP-9の働きを抑えると異常な骨化を減らせることも確認できました。この発見は、FOPの早期に治療介入できる可能性を示しており、患者さんの生活の質を改善する新しい治療法の開発につながることが期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部)