中心視力低下が徐々に進行し、日常生活に困難が生じる疾患
スペインのSpliceBio社は、2025年3月、スタルガルト病(Stargardt disease)の遺伝子治療薬として開発中のSB-007について、第1/2相ASTRA試験において最初の患者さんに投与が行われたと発表しました。
スタルガルト病は、ABCA4遺伝子の変異によって引き起こされる遺伝性網膜疾患の一つです。網膜の中心部にある黄斑という部分の損傷によって、中心視力が徐々に低下していきます。発症年齢はさまざまで、小児期や青年期に発症する場合もあれば、成人期になってから発症する場合もあります。症状は進行性であり、だんだん日常生活に困難が生じるようになります。これまでに承認された治療法はなく、また、ABCA4遺伝子はサイズの大きい遺伝子であるため、遺伝子治療の開発が難しいことが課題でした。
タンパク質スプライシングとデュアルAAV技術を用いた遺伝子治療
SB-007は、スタルガルト病の治療薬として開発中の遺伝子治療薬で、デュアルAAV(大きな遺伝子を2つのAAVベクターに分割して運ばせる)と、タンパク質スプライシング(分割された遺伝子から作られる部分タンパク質を細胞内で1つのタンパク質に結合させる)と呼ばれる技術を用いて、網膜において全長ABCA4タンパク質を発現させるように設計されています。
同剤は、米国FDAと欧州委員会から希少疾病用医薬品の指定を受けています。また、2024年12月にFDAから、新薬や生物学的製剤の臨床試験を米国内で実施するためのIND(Investigational New Drug application approval)承認を取得しました。
同社の最高医学責任者であるアニズ・ギラック医学博士は、「SB-007の単回投与は、あらゆるABCA4遺伝子変異を持つスタルガルト病の根本原因に対処できる可能性があります。第1/2相ASTRA試験では、スタルガルト病の患者さんにおけるSB-007の安全性と有効性を評価します」と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)