CARASIL

遺伝性疾患プラス編集部

英名 CARASIL
別名 禿頭(とくとう)と変形性脊椎症を伴う常染色体劣性白質脳症、Cerebral autosomal recessive arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy
日本の患者数 これまでに21人を確認
発症頻度 不明
子どもに遺伝するか 遺伝する[常染色体劣性(潜性)遺伝形式]
発症年齢 思春期頃から
性別 男女とも
主な症状 脳卒中、認知症、脱毛 (脱毛症)、歩行障害、腰痛など
原因遺伝子 HTRA1
治療 対症療法
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どのような病気?

CARASIL(カラシル)[禿頭(とくとう)と変形性脊椎症を伴う常染色体劣性白質脳症]は、脳の中の非常に細い血管(脳小血管)が衰えることで、頭髪や背骨などの発育・成長不良や、脳卒中などの症状が現れる遺伝性疾患です。

この病気で引き起こされる主な症状として、禿頭(髪の毛が薄くなる早期脱毛)、腰や背中の痛み、歩行時のふらつき(歩行障害)、無気力やイライラなどの性格の変化、注意力や記憶力の低下、認知症、脳卒中などがあります。

病気の経過として、早期脱毛が見られる場合は10代の思春期頃に始まります。歩行障害は多くの場合30代までに見られ始め、40歳までに脳卒中や注意力・記憶力の低下などの症状が見られます。症状はとてもゆっくり進行しますが、進行の速度には個人差があり、脳梗塞を起こした後に歩行障害や認知症が急速に進むこともあります。腰痛以外の症状は生涯に渡って進行し、病気が進行すると車いすや日常生活での介助が必要になります。

重度の腰痛や背中の痛みは通常20~45歳くらいでみられ椎間板ヘルニア、結節肥厚、骨粗鬆症を伴う重度の変形性脊椎炎となる場合もあります。

CARASILで見られる症状

良く見られる症状

動脈硬化、歩行障害、頸椎症、背中の痛み、下肢の痛み、局所性の骨粗しょう症、仮性球麻痺(かせいきゅうまひ)、けいれん性の運動失調、痙性(けいせい)、脳卒中のような症状、行動障害、認識機能障害

しばしば見られる症状

頭皮の脱毛症、びまん性の大脳萎縮症、錐体路(すいたいろ)の機能障害、片麻痺(まひ)、首の痛み、筋硬直、感覚障害、脳卒中、無為(意欲が低下もしくは失くしている状態)、攻撃的行動、無動無言症(自発的な運動や発語が見られない)、無関心、認知症、情動不安定、過敏性、進行性認知機能低下

非常にまれに見られる症状

両側強直間代てんかん、脊柱後弯症

CARASILは大変まれな病気であり、これまでに日本で21人、海外で53人の患者さんが確認されています。しかし、調査は十分ではなく、まだ診断されていない人が多くいると考えられています。また、これまでに確認された患者さんの多くは日本もしくは中国で報告されていますが、この病気の発症しやすさに人種などの偏りがあるかはわかっていません。CARASILは男女ともに発症しますが、わずかに男性が多いという報告もあります。

CARASIL(禿頭と変形性脊椎症を伴う常染色体劣性白質脳症)は指定難病対象疾病(指定難病123)です。

何の遺伝子が原因となるの?

CARASILは、10番染色体上の10q26.13と呼ばれる領域に存在するHTRA1(High Temperature Requirement Serine Peptidase A1)遺伝子変異によって引き起こされます。この遺伝子は、体内のあらゆる臓器や組織で働くHTRA1酵素の設計図となる遺伝子です。HTRA1酵素の主要な役割の一つは、TGF-βファミリーと呼ばれるタンパク質によって細胞内で起こるシグナル伝達を制御することです。シグナル伝達とは、ホルモンや酵素など他の細胞や組織から送られてきた信号(シグナル)を細胞の中に伝えることで、特定の遺伝子を働かせてタンパク質を作らせるなどの変化を促す仕組みです。TGF-βによるシグナル伝達は、細胞の成長や増殖など、細胞の基本的な機能において非常に重要な働きを持ち、新しい血管の形成(血管新生)にも重要な役割を持ちます。

CARASILでは、HTRA1遺伝子の異常がTGF-βシグナル伝達の正常な制御を失わせ、異常なTGF-βシグナルの増大が脳の血管構造に影響を及ぼすのではないかと考えられています。血管構造の異常や衰えは脳卒中のリスクを増大させ、脳内の神経細胞を失うことにつながります。CARASILで起こる脱毛や背中の痛みなどもTGF-βシグナル伝達が正しく制御されないことに関係していると考えられていますがこれらの症状との関連ははっきりとはわかっていません。

CARASILは、常染色体劣性(潜性)遺伝形式で遺伝し、両親から受け継いだ2つのHTRA1遺伝子の両方に変異が生じることで発症します。その場合、両親はこの病気の保因者ではありますが、病気は発症しません。一部において、遺伝子の変異のタイプによっては片方の親だけが遺伝子変異を持つ場合に子どもが発症する例もあることが報告されています。

Autosomal Recessive Inheritance

どのように診断されるの?

CARASILの診断として、以下の1)から5)の症状や状況からこの病気が疑われます。

1)55歳以下の発症(大脳白質病変又は中枢神経病変に由来する臨床症候)

2)「皮質下性認知症・錐体路障害・偽性球麻痺のどれか」、禿頭(アジア系人種40歳以下)、「変形性脊椎症または急性腰痛」の3つのうち2つ以上の症状が見られる

3)常染色体劣性遺伝形式(孤発例の場合もある)

4)MRI/CTで、広汎な大脳白質病変(側頭極を含むことがある)

5)白質ジストロフィー(副腎白質ジストロフィー、異染性白質ジストロフィーなど)を除外できる

3)、4)と併せて、遺伝学的診断によりHTRA1遺伝子の変異が認められた場合に診断が確定します。また、1)から5)を満たすものの、遺伝学的診断が行われていない場合はこの病気の疑いとなります。

どのような治療が行われるの?

この病気の根本的な治療法は今のところ見つかっておらず、症状に合わせた対症療法がとられます。

高血圧の予防、禁煙や飲酒量を減らすことなどによって症状の進行を遅くできる可能性があると考えられています。

どこで検査や治療が受けられるの?

日本でCARASILの診療を行っていることを公開している、主な施設は以下です。

※このほか、診療している医療機関がございましたら、お問合せフォームからご連絡頂けますと幸いです。

患者会について

難病の患者さん・ご家族、支えるさまざまな立場の方々とのネットワークづくりを行っている団体は、以下です。

参考サイト

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

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