FOXG1症候群

遺伝性疾患プラス編集部

英名 FOXG1 syndrome
別名 非典型的レット症候群、FOXG1関連疾患
患者数 世界で100人以上が報告されている
子どもに遺伝するか 遺伝する(常染色体優性(顕性)遺伝形式)が、これまでの報告は全て孤発例
発症年齢 生まれつき
性別 男女とも
主な症状 小頭症、発達/知的障害、不随意運動、摂食障害など
原因遺伝子 FOXG1遺伝子
治療 対症療法
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どのような病気?

FOXG1症候群は、発達障害と脳の構造異常を特徴とする遺伝性疾患です。この病気の赤ちゃんは小さく生まれます。また、頭部の成長が通常よりも遅いため、幼児期までに小頭症になります。FOXG1症候群では、発達の多くの側面に影響が現れ、一般的に子どもは重度の知的障害があります。また、手足のけいれんや手の反復運動など、異常な不随意運動が多く見られ、ほとんどの子どもは補助なしでは座ったり歩いたりできません。FOXG1症候群の乳幼児は、摂食障害、睡眠障害、発作、神経過敏(イライラ)、過剰な泣き声を伴うことが多くあります。FOXG1症候群は、コミュニケーションや社会的相互作用が限られていることも特徴で、アイコンタクトが乏しく、発話や言語能力がほとんど見られない場合もあります。こうした社会的な障害から、FOXG1症候群は自閉症スペクトラム障害に分類されています。

FOXG1症候群は、特定のパターンの脳奇形と関連していることがわかっています。具体的には、脳の右半分と左半分の間の接続部分(脳梁と呼ばれる構造)が薄いまたは未発達、脳の表面にあるひだや溝が少ない、白質と呼ばれる脳組織の量が通常よりも少ない、などです。

FOXG1症候群は、レット症候群と脳の発達障害が類似しているため、以前は非典型的レット症候群(レット症候群の非典型例)として説明されていました。どちらの病気も、発達障害、知的障害、コミュニケーションや言語の問題を特徴としています。しかし、レット症候群と診断されるのはほとんど女性だけであるのに対し、FOXG1症候群は男女ともに発症します。また、レット症候群は、生後半年くらいまでは目立った症状がなく過ごしますが、FOXG1症候群は、生まれたときから症状が現れています。このような違いから、現在、FOXG1症候群はレット症候群とは異なる疾患であると考えられるようになっています。

FOXG1症候群は、人数の少ない希少疾患ですが、これまでに世界で100症例以上が報告されています。国際FOXG1財団(International FOXG1 Foundation)のウェブサイトによると、これまでにFOXG1症候群と診断された人は486人(同財団に関わっているFOXG1症候群の人は260人で毎週増加中)と示されています(2021年8月現在)。また、同サイトのFAQでは平均余命についても言及されており、同財団が把握しているFOXG1症候群の最年長者は29歳ですが、この病気の人の数は非常に少ないため、平均余命はわかっていないとされています。

FOXG1症候群は、レット症候群の非典型例として、国の指定難病対象疾患(指定難病156)、および、小児慢性特定疾病の対象疾患となっています。

何の遺伝子が原因となるの?

FOXG1症候群は、14番染色体の14q12という位置に存在する「FOXG1遺伝子」の異常によって引き起こされます。この遺伝子は、「フォークヘッドボックスG1(FOXG1)」と呼ばれるタンパク質の設計図となる遺伝子です。このタンパク質は、胎児の脳の発達に重要な役割を果たしており、特に「終脳」と呼ばれる領域で重要な働きをしています。終脳は最終的に、大脳を含むいくつかの重要な部分になります。大脳は、ほとんどの自発的な活動、言語、感覚の知覚、学習、および記憶を制御している部分です。

FOXG1症候群は、FOXG1遺伝子そのものの変異によって引き起こされる場合もあれば、FOXG1遺伝子を含む14番染色体の長腕(q腕)領域が欠失していることで引き起こされる場合もあります。こうした遺伝的変化により、正常に機能するフォークヘッドボックスG1を十分な量作ることができないと、生まれる前から脳が正常に発達できず、FOXG1症候群に特徴的な脳の構造的異常や重度の発達障害につながると考えられています。

62 Foxg1症候群 病気の仕組み

FOXG1症候群は、常染色体優性(顕性)遺伝形式で遺伝するとみなされていますが、症状が重篤なため、FOXG1症候群の人に子供がいるという報告はこれまでにありません。これまでに報告されたすべての症例は、両親には変異がなくその子どもで新たに起きた変異(新生変異、孤発例)で、家系は確認されていません。

Autosomal Dominant Inheritance 2 Logo
常染色体優性(顕性)遺伝形式

どのように診断されるの?

難病情報センターに記載されている診断基準によると、FOXG1症候群を含む非典型的レット症候群と確定診断されるのは、以下の診断要件を満たす場合です。

  • 「目的のある手の運動機能を習得した後に、その機能を部分的、あるいは完全に喪失する」「音声言語を習得後に、その機能を部分的、あるいは完全に喪失する」「歩行異常(歩行障害、歩行失行)」「手の常同運動(手をねじる・絞る、手を叩く・鳴らす、口に入れる、手を洗ったりこすったりするような自動運動)」の4つのうち2つがみられる
  • 「明らかな原因のある脳障害(周産期・周生期・後天性の脳障害、神経代謝疾患、重度感染症など)による脳損傷」「生後6か月までに出現した精神運動発達の明らかな異常」の両方が見られる
  • 「覚醒時の呼吸異常」「覚醒時の歯ぎしり」「睡眠リズム障害」「筋緊張異常」「末梢血管運動反射異常」「側弯・前弯」「成長障害」「小さく冷たい手足」「不適切な笑い・叫び」「痛覚への反応の鈍麻」「目によるコミュニケーション、じっと見つめるしぐさ」のうち5つ以上が見られる
  • アンジェルマン症候群、ピット・ホプキンス症候群、自閉症スペクトラム症(障害)などの発達障害ではなく、回復期や安定期が後続する退行期がある

FOXG1遺伝子の遺伝学的検査により、異常が見つかると、さらに強く非典型的レット症候群(FOXG1症候群)と確定診断されます。

どのような治療が行われるの?

今のところ、FOXG1症候群を根本的に、つまり、遺伝子から治すような治療法は見つかっていません。そのため、それぞれの症状に合わせた対症療法が中心となります。

例えば、運動に関する症状には理学療法や作業療法、言語については言語療法、けいれんに対して抗けいれん薬の調整などが行われます。情緒面の問題や知的障害に対するいろいろな工夫、療育なども重要です。手の反復運動や異常呼吸に対しては薬による治療も試みられてきていますが、有効なものはまだ見つかっていません。

どこで検査や治療が受けられるの?

日本でFOXG1症候群の診療を行っていることを公開している、主な施設は以下です。

※このほか、診療している医療機関がございましたら、お問合せフォームからご連絡頂けますと幸いです。

患者会について

FOXG1症候群の患者会で、ホームページを公開しているところは、以下です。

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参考サイト

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

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