世界とつながる患者・家族の輪、FOXG1症候群患者家族会

遺伝性疾患プラス編集部

患者さんの報告が世界で500人くらい(※International FOXG1 Foundationによる)と、患者数の少ない希少疾患「FOXG1症候群」。日本で初めてとなる患者家族会「FOXG1症候群患者家族会」が2018年(正式発足宣言は2020年)に立ち上がりました。

今回お話を伺ったFOXG1症候群患者家族会の堀田健一さん、絵美さんご夫妻は、お子さんがFOXG1症候群をお持ちです。希少疾患であるがゆえに、なかなか情報を集められずに苦労された経験から、自ら研究者の方々とコンタクトを取り、そこから多くの方々との出会いがあった中で、患者家族会の立ち上げを決意されました。現在、日本だけでなく海外の団体とも連携しながら、FOXG1症候群についての情報を発信し続けています。

FOXG1症候群患者家族会は、優しく和やかな雰囲気も特徴の一つで、堀田さんご夫妻や会員(メンバー)の皆さんが楽しみながら活動を続けられています。今回は、堀田さんご夫妻のご経験や、活動内容についてお話をお伺いしました。

Foxg1 Pro
FOXG1症候群患者家族会 堀田健一さん・絵美さん
団体名 FOXG1症候群患者家族会
対象疾患 FOXG1症候群
対象地域 主に、日本(アメリカ在住の方含む)
会員数 16家族
設立年 2018年(正式発足宣言は2020年)
連絡先

公式ウェブサイトの「お問い合わせフォーム」から

サイトURL https://sites.google.com/view/foxg1/
SNS

Twitter
Facebook

主な活動内容

患者さんやご家族向けに、FOXG1症候群に関わるさまざまな情報共有を行っている。海外の団体や研究者、医師などとも連携し、活動中。

「子どものために力をあわせよう」と、患者家族会を発足

お子さんがFOXG1症候群の診断を受けられた経緯について、教えてください。

絵美さん: 生後4~6か月頃、健診の際に小児科の医師から「成長の具合が少し心配なので、大きな病院で検査を受けましょう」と、言われたことがきっかけでした。具体的には、わが子の頭囲の大きさが平均よりも少し小さいことが気になるというものでした。当時、病院のことはあまり詳しくなかったので、先生にご紹介頂いた病院へ受診することになったんです。

その後、MRIや髄液の検査など、さまざまな検査を受けたのですが、なかなか頭囲が小さめである原因がわかりませんでした。最終的に「遺伝子を検査しましょう」とお話があり、2016年7月に、FOXG1症候群と診断を受けました。

Foxg1 01
さまざまな検査を受け、FOXG1症候群と診断
FOXG1症候群という名前は、ご存知でしたか?

絵美さん: いいえ、聞いたことも無かったです。また、医師から頂いた資料に簡単な情報しか書いてなかったため、診断を受けた後、診察室を出てすぐにスマートフォンで病気をネット検索しました。しかし、ほとんど情報を見つけることはできなかったんです。

健一さん: そこから、FOXG1症候群に関係ありそうな記事は、日本語に限らず、とにかく何でも読みました。しかし、専門用語の意味がわからなかったり、外国語の記事であればうまく翻訳できなかったりと苦労しました。

もちろん、同じFOXG1症候群の方もなかなか見つけられず、「わが子は今後、どのように成長していくのだろう…」など、知りたい情報を得られない状況が続きました。

堀田さまが活動を始めたきっかけについて、教えてください。

健一さん: レット症候群、MECP2重複症候群の研究班の会議に参加したことがきっかけでした。レット症候群の研究をされている松石豊次郎先生にご連絡した際に教えて頂き、私たちも参加することになったんです。この会議で、研究者や医師の方々、他の疾患の患者団体を運営している方々に出会い、患者家族会の大切さを知りました。ここで出会った方々には、今も大変お世話になっています。

当時、日本にはFOXG1症候群の患者家族会はなかったので「自分たちで作るしかない!」という想いで、患者家族会を立ち上げました。FOXG1症候群は希少疾患で患者数が少ないこともあり、「子どもたちのために、みんなで力をあわせよう」と、自然と一致団結することができましたね。

FOXG1症候群の情報共有、海外の最新情報もタイムリーに

もともと、患者家族会メンバーの情報共有の場として会を運営されていたと伺いました。そこから、外部向けの発信を始めようと思われたきっかけについて、教えてください。

絵美さん: 「FOXG1症候群に関わる情報が集まる場」だけでなく、私たちの活動を通じて「同じような悩みを抱える人たちが、少しでも楽になってもらえたら」という想いもあり、外部発信を始めました。

また、外部発信を始めた背景として、患者さんやご家族がFOXG1症候群と診断を受けた後で、希少疾患ならではのさまざまな課題があることも挙げられます。例えば、「自分たちが知りたいと思っていることを知る場が少ない」「医師によっては、疾患に詳しくない場合がある」といったことを患者さんご家族は経験します。新たにFOXG1症候群の診断を受ける患者さんご家族が、同じ病気の人を探したり、情報を集めたりする時に、FOXG1症候群患者家族会へたどり着くことができるように、と考えました。

健一さん: また、公式ウェブサイトに関しては、患者家族会の運営をサポート頂いている、東京女子医科大学医学部生理学(神経生理学分野)の三好悟一先生にもアドバイスを頂きながら、運営しています。

Foxg1 02
FOXG1症候群患者家族会公式ウェブサイトより
情報共有のために、メンバー限定のLINEグループも活用されているんですよね。LINEグループでは、どのような話題があがっていますか?

絵美さん: 日常生活でのお悩み相談から、FOXG1症候群研究の最新情報の共有など、さまざまなやりとりが行われています。特に、日常生活に関わるお話が多く、先輩の患者さんご家族より、患者さんの就学や、車いすなどの介護用品、受給しているサービスといったさまざまな情報を共有頂いています。

健一さん: また、私たちも定期的にアンケートを取り、メンバーの皆さんがどのようなことに興味を持っているか、知りたいと思っているか、などを把握するようにしています。

オンラインおはなし会は、どのような活動ですか?

絵美さん: その名の通り、オンライン上で顔をあわせながらお話しする会です。日常生活のお悩み相談や活動報告のほか、FOXG1症候群に関わる最新情報も共有しています。

もともとは、「それぞれの悩みを素直に話せるように、顔をあわせて会話していこう」という考えのもと始めた活動でした。私たちの患者家族会は、日本全国だけでなく、アメリカにお住まいのメンバーもいるので、コロナ禍に関わらず、オンラインでの集まりは今後も続けていく予定です。

Foxg1 03

「それぞれの悩みを素直に話せるように」という考えから始まったオンラインおはなし会

また、定期的に、三好悟一先生を招いての勉強会も同時開催しています。FOXG1症候群の最新研究のお話から、遺伝子の仕組みといった疾患に関わる基礎的なお話もして頂いています。メンバーであれば、どなたでも安心してご参加頂けますよ。

健一さん: その他、FOXG1 Research Foundationという、海外のFOXG1症候群患者・家族を支援する財団ともつながりがあるため、海外の最新情報も共有しています。幸いなことに、患者家族会にはアメリカにお住まいのご家族がいらっしゃいますので、そのご家族が現地のシンポジウムに参加するなどして、タイムリーに最新情報を知らせてくれます。

もちろん、ご家庭の事情などで集まりに参加できないという方もいらっしゃいます。そういった方には、こちらで毎回準備している資料を共有させて頂きます。会員限定としていますが、現在、会員登録は無料ですので、FOXG1症候群と診断されたご家族やFOXG1症候群疑いとされた方は、お気軽にお問い合わせください。

FOXG1 Research Foundationや医師・研究者との連携も加速

これまでの活動の中で、印象深かった出来事はありますか?

絵美さん: いろいろな出来事があった中でも、特に、FOXG1 Research Foundationの創始者の1人であるクリスティーンさんが来日された際、お会いできたことは印象深かったです。もともと、私がFacebookを通じてコメントのやり取りをしていたことがきっかけとなり、「日本で会いたい」とご連絡頂き、実現しました。

クリスティーンさんご自身も、FOXG1症候群の患者家族です。同じ患者家族として、さまざまなお話ができたことはもちろん、クリスティーンさんが海外でどのような活動をされているかを直接伺えたことも大きな経験となりました。

健一さん: まさか、自分たちがFOXG1 Research Foundationの創設者の方とお会いできると思ってなかったので、本当にうれしかったです。

今後、特に力を入れていく活動について教えてください。

絵美さん: FOXG1 Research Foundationとは今後も協力していく予定です。互いに情報のやりとりができるように、アメリカ在住のメンバーの力も借りながら、連携していく予定です。FOXG1症候群に関わる最新情報を知るという意味では大切な取り組みになると思いますね。

また、治療法の確立へ向けて、お世話になっている先生方とも引き続き協力して活動していきます。

メンバーの声に支えられ、これからも前に進む

FOXG1症候群や、その他の遺伝性疾患に関わる方々へのメッセージをお願いします。

健一さん: 遺伝性疾患には、多くの種類があり、それぞれの疾患ごとに違いがあります。FOXG1症候群だけでなく、さまざまな疾患を抱える患者さんやご家族とお話しする中で感じているのは、皆さん同じような悩みや不安を抱えていらっしゃるということです。

同じ疾患でなかったとしても、さまざまな疾患と向き合い生きている患者さんやご家族のお話から、何度も「元気」と「少しの勇気」を分けて頂きました。その一つひとつのおかげで、私たちもまた、日々の生活を「また一歩、頑張ろう」と思うことができ、背中を押してもらっています。

絵美さん: 私たちは、活動を始めてまだ日が浅いということあり、今も手探り状態で活動しています。そのため、FOXG1症候群や遺伝性疾患に関わる全ての方々と、一緒に頑張っていけたらうれしいです。

遺伝性疾患をより多くの方々に知ってもらい、理解され、そして、支えあえる…いつか、そんな社会になったらと思いますね。そのために、これからもさまざまな可能性を信じて、前に進んでいきます。

Foxg1 04
「遺伝性疾患をより多くの方々に知ってもらい、理解され、支えあえる社会になったら」と、絵美さん

健一さん: そして、最後に、いつも一緒に活動してくれているFOXG1症候群患者家族会メンバーの皆さんには感謝しています。定期的に行っているアンケートでは、「活動に参加させてもらえるだけでもありがたい」「情報が得られるということが、本当にうれしい」など、温かいコメントを書いてくださるメンバーが多くいらっしゃいます。そういった声のおかげで、私たちもまた、この活動を続けることができていると思うのです。

本当に、メンバーの皆さんに恵まれていると感じています。同じ疾患と向き合う家族の集まりはとても心強く感じていますし、これからも、ともに楽しんで活動していけたら嬉しいです。


今回、特に印象的だったのは、堀田さんご夫妻が患者家族会のメンバーの皆さんを思う気持ちに始終あふれていたことです。そして、参加されているメンバーの皆さんもまた、同じように、患者家族会を大切に思われていることが、取材を通じて伝わってきました。そして、その輪は、日本だけでなく世界にもつながっています。

一方、お子さんの病気と向き合い、仕事もしながら日常生活で送っていく日々は、決して簡単なことではありません。しかし、その中でも、健一さんはFOXG1症候群患者家族会のイベントごとにメンバーの皆さん向けの資料を準備されたり、絵美さんは「おはなし会スピンオフ(立ち話的な雑談会)」を開催し、メンバー同士の交流も深めていたりと、さまざまな工夫をされていました。

「みんなが、楽しく参加できる場をつくり続けたい」というお二人の想いが、FOXG1症候群に関わる多くの方々へ届くことを願っています。(遺伝性疾患プラス編集部)

関連リンク