Lamb-Shaffer症候群

遺伝性疾患プラス編集部

英名 Lamb-Shaffer syndrome
別名 LAMSHF、12p12.1microdeletion 症候群
日本の患者数 不明
発症頻度 100万人に1人以下
子どもに遺伝するか 遺伝する[常染色体優性(顕性)遺伝形式]が、ほとんどは孤発例
発症年齢 乳児期から
性別 男女とも
主な症状 精神運動発達遅滞、特徴的な顔立ちなど
原因遺伝子 SOX5
治療 対症療法
もっと見る

どのような病気?

Lamb-Shaffer(ラム・シャッファー)症候群は、精神運動発達遅滞や特徴的な顔立ちを主な症状とする非常に稀な遺伝性疾患で、2012年Lamb氏とShaffer氏によって発見されたことからこの名前がつけられました。

この病気では、多くの場合、全般的発達遅滞に加え、発話遅延・発語不全、軽度から中程度の知的障害が乳児期より見られます。顔立ちの特徴として、額部分の骨が前に出る(前頭隆起)、目頭部分を上まぶたが覆う(内眼角贅皮・ないがんかくぜいひ)、斜視、耳(耳介)形状の異常、鼻筋(鼻梁)が低く鼻先が広い、鼻と上唇の間の長さ(人中)が短い、上唇が薄いかまたはふっくらした唇、歯が重なりあって生える(叢生歯)、顎が小さい、面長などがあります。身長や体重、頭囲は正常の範囲内であるとされます。

その他には、行動上の問題として、攻撃性、不安症、常同症、自閉症スペクトラム症のような症状が見られ、骨格の異常としては、脊椎に関係する脊柱側弯症、漏斗胸の他、斜指症なども見られます。まれにてんかん発作が起こる場合や、視神経の萎縮などの目の症状、臓器の奇形などが見られることもあります。

この病気の経過として、胎児期や出生時、新生時期にはほとんど症状が見られません。多くの場合、乳児期以降において体幹の筋緊張低下や歩き始めが遅れる、発話が遅れるといった「発育遅延」が、最初の症状として確認されます。成長するにつれ、小児期には軽度から中程度の知的障害が主な症状となります。知的障害の程度は、より重度である場合や反対により軽度となる場合もあり、さまざまです。

Lamb-Shaffer症候群で見られる症状

高頻度に見られる症状

顔貌異常、歩行開始遅延、全般的発達遅滞、知的障害、限局性学習障害(知的な発達や視覚、聴覚に異常がないものの、読む・書く・計算するなどの特定のことが困難な状態)

よく見られる症状

筋緊張低下、発話と言語発達の遅れ、軽度の知的障害、斜視

しばしば見られる症状

小頭症、頭囲減少、長い顔、内眼角贅皮、広い鼻先、厚い唇、小顎症、短い顎、頸椎の癒合、脊柱側弯症、視神経萎縮、異常な社会的行動、異常なかんしゃく、自閉症的行動、摂食困難、多動性、軽度の出生後発育遅延、常同運動行動、運動失調、上位運動ニューロン障害、てんかん発作

非常にまれな症状

胸椎後弯、股関節形成不全、弱視、大脳性視覚障害

Lamb-Shaffer症候群について、正しい発生頻度や患者数はわかっていませんが、100万人に1人よりも少ない頻度であると推定されています。

何の遺伝子が原因となるの?

Lamb-Shaffer症候群の原因として、12番染色体の12p12.1と呼ばれる領域にあるSOX5遺伝子の変異、もしくはこのSOX5遺伝子を含む領域の微小欠失が見つかっています。

SOX5遺伝子は、の発生や細胞がどのように分化するのかに関わるSOX(SRY-related HMG-box)ファミリーの一員である、SOX5タンパク質の設計図となる遺伝子です。SOXファミリータンパク質は、他のタンパク質と複合体を形成することで、さまざまな遺伝子の働きを制御する転写因子として機能することが知られています。SOX5タンパク質は神経系の発達や軟骨の形成にも関与する転写因子であり、この遺伝子の欠失や変異によって、成長や発達に重要な遺伝子を働かせる機能が失われ、Lamb-Shaffer症候群の症状が引き起こされると考えられます。

Re102 Lamb Shaffer症候群 仕組み

また、Lamb-Shaffer症候群には、このSOX5遺伝子のハプロ不全と呼ばれる現象が関わっています。ヒトの各遺伝子は父、母それぞれから受け継いだ2コピーがあります。その一方に異常があっても、1つの正常な遺伝子のみで十分に機能する場合もありますが、SOX5遺伝子の場合は、変異などにより正常な遺伝子が1つだけであると残り1つの正常タンパク質では機能を補いきれず、病気の症状が引き起こされます。

Lamb-Shaffer症候群において、ほとんどの患者さんは孤発例で、親には遺伝子変異がなく、偶発的に生まれるとされます。遺伝する場合、この病気の遺伝形式は常染色体優性(顕性)遺伝形式で、親の病気がその子どもに引き継がれる確率は50%です。また、親の染色体モザイクという現象によって発症する可能性もあります。

Autosomal Dominant Inheritance

どのように診断されるの?

Lamb-Shaffer症候群の診断について、日本ではまだ確立した基準が設けられていません。

欧州の希少疾患情報サイト(orphanet)によれば、この病気の診断は症状(軽度から中程度の知的障害、顔立ちなどの形態的特徴、発達障害など)からこの病気の疑いとなり、遺伝学的検査によってSOX5遺伝子の欠失または変異が認められた場合に診断が確定されます。また、このSOX5遺伝子の病的バリアントが家系において認められている場合には出生前診断が行われる場合があります。

どのような治療が行われるの?

Lamb-Shaffer症候群の根本的な治療法はまだありません。そのため、それぞれの症状に合わせた対症療法がとられます。特別な学校教育や言語療法といった、医療ケアと社会的なケアの両方が必要とされます。

また、この病気の患者さんの平均余命は病気の影響を受けないと考えられています。

どこで検査や治療が受けられるの?

日本でLamb-Shaffer症候群の診療を行っていることを公開している、主な施設は以下です。

※このほか、診療している医療機関がございましたら、お問合せフォームからご連絡頂けますと幸いです。

患者会について

難病の患者さん・ご家族、支えるさまざまな立場の方々とのネットワークづくりを行っている団体は、以下です。

米国のLamb-Shaffer症候群の患者支援団体で、ホームページを公開しているところは、以下です。

参考サイト

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

このページ内の画像は、クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。
こちらのページから遺伝に関する説明図を一括でダウンロードすることも可能です。