MODY(家族性若年糖尿病)

遺伝性疾患プラス編集部

MODY(家族性若年糖尿病)の臨床試験情報
英名 MODY
別名 Maturity-onset diabetes of the young、若年発症成人型糖尿病
日本の患者数 不明
発症頻度 糖尿病全体の1~3%程度と推定
子どもに遺伝するか 遺伝する[常染色体優性(顕性)遺伝形式]
発症年齢 25歳以下
性別 男女とも
主な症状 若年発症の糖尿病
原因遺伝子 GCK、HNF1A、HNF4A、HNF1B、ABCC8、INS、KCNJ11など
治療 対症療法(食事・運動療法、スルホニル尿素薬など)
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どのような病気?

家族性若年糖尿病(MODY)は、遺伝子の変化が原因で糖尿病を発症する遺伝性疾患です。

糖尿病は一般に、ブドウ糖を代謝するためのホルモンであるインスリンの働きが悪くなることによって血液の中でブドウ糖の濃度(血糖値)が上昇してしまう病気です。健康な場合、膵臓のベータ細胞から分泌されるインスリンによって、血糖値は増えすぎたり減りすぎたりしないようにコントロールされていますが、糖尿病はこのコントロールがうまくいかず、血糖値が高い状態が続くことで発症します。糖分の多い血液が流れ続けると、血管は傷つきやすくなり、細い血管ほどその影響が大きくなります。血糖値がコントロールされないことで、失明、腎不全、足の切断、心臓病などにつながることもあります。

MODYでは、遺伝的な原因によりインスリンが十分に分泌されず(インスリン分泌不全)、そのため異常に高い血糖値が引き起こされます。この病気では、2型糖尿病で見られるような、肥満によるインスリン抵抗性(インスリンが分泌されていても、効きにくくなる状態)や、また多くの1型糖尿病で見られるような、膵臓のベータ細胞に対する自己免疫反応は見られません。

MODYで糖尿病を発症する人の多くは、肥満ではなく、また25歳以下の高齢ではない人ですが、まれに歳をとってから発症する人もいます。また、家族や親せきの中に若くして発症している人がいる(家族歴)ことも特徴の一つになりますが、孤発例と呼ばれる現象により家族歴がなくても発症する場合もあります。

この病気は、原因遺伝子によって病型が分かれ、症状や重症度は病型によって少しずつ異なります。これまでにMODY1~MODY14までが報告されており、さらに原因遺伝子が不明のMODYXも存在します。海外のデータでは、患者さんの数が多い病型はMODY2とMODY3で、その次に多い病型はMODY1、MODY5です。この4つの病型がMODYのほとんどを占め、他の病型は全体の1%以下でまれです。

MODY2は、比較的軽症で、あまり症状が見られない人も多いのが特徴です。朝の空腹時血糖値が少し高いことが知られ、食後血糖値には異常が見られないことが多いとされます。糖尿病の合併症が生じることは少なく、多くは学校の検尿や別の検査で偶然発見されます。

MODY3は、糖尿病が発症する前には、尿糖検査で陽性になることがある程度ですが、時間の経過とともにインスリン分泌能の低下が進行していきます。高血糖の初期には、頻尿、喉の渇き、疲労、かすみ目、体重減少、繰り返す(再発性)皮膚感染症などが見られることもあります。その後、高血糖が制御できない状態が続くと、細い血管が傷つく(細小血管合併症)ことによって、腎症(腎臓の機能低下)や網膜症(網膜出血や網膜剥離など視力低下につながる)などにつながる可能性があります。

MODY1は、MODY3と症状が似ていますが、細小血管合併症を発症する頻度が高く、予後は悪い場合が多いとされます。また、子どもの時もしくは若年成人まで他の症状が現れていない場合でも、出生時の体重が平均より大きい、赤ちゃんの時の血糖値が異常に低いなどの傾向が見られることがあります。

MODY5(腎嚢胞・糖尿病症候群とも呼ばれます)では多くの場合に糖尿病と腎疾患を合併する可能性が高く、腎嚢胞(腎臓に水がたまった袋がたくさんできて働きが低下する)、家族性高尿酸血性腎症、その他の腎奇形などがこの病型の人の約8割において見られます。しかし、症状は同じ家族であってもさまざまです。また、膵臓や肝臓の異常、痛風のような関節炎などの症状が見られることもあります。

MODYの発症頻度は、海外では糖尿病全体の1~3%程度であると推定されています。また、欧州の希少疾患情報サイト(orphanet)では、大人で1万人に1人、子どもで2.3万人に1人と推定されていると記載しています。しかし、日本での発症頻度や患者数はわかっていません。この病気は、1型や2型糖尿病として治療され、気が付かれていない場合も多くあると考えられています。

MODYは、「若年発症成人型糖尿病(MODY)」として小児慢性特定疾病の対象疾患となっています。

何の遺伝子が原因となるの?

MODYは、インスリンの合成や分泌などに関わるタンパク質、あるいはそれらの遺伝子の働きを制御する転写因子の設計図である遺伝子の異常によって引き起こされます。それぞれの原因遺伝子の機能や主に働く臓器によって少しずつ症状が異なります。

MODYでは、これまでに全部で14種類の遺伝子が報告されていますが(下表参照)、まだ明らかにされていない原因遺伝子も存在すると考えられています。

MODY2は7番染色体のGCK遺伝子が原因となります。GCK遺伝子が設計図となるタンパク質は、血液中のブドウ糖(グルコース)が上昇すると、それを認識するためのセンサーとして働きます。このタンパク質は、血糖値の上昇に応じてベータ細胞からインスリンを分泌させる働きを持っています。GCK遺伝子に変異が生じると、このタンパク質に異常が起こり、血糖値の上昇を感知することができず血糖値は上がったままになります。

MODY3は、12番染色体のHNF1A遺伝子、MODY1は、20番染色のHNF4A遺伝子、MODY5は、17番染色体のHNF1B遺伝子が原因となります。HNF1A遺伝子、HNF4A遺伝子、HNF1B遺伝子から作られるタンパク質は、インスリンを分泌するベータ細胞の発生と機能に関わる遺伝子を制御する転写因子として働きます。これらの遺伝子の変異によって、正常な転写因子が作られず、ベータ細胞の発生や機能が損なわれます。その結果、血液中の糖に応じてインスリンを産生する能力が低下し、血糖値が上昇することでMODYのさまざまな症状が引き起こされます。また、これらの遺伝子は体のそれ以外の部分にも影響を与えることがわかっています。例えば、HNF1B遺伝子は腎臓の発達に関わり、そのことがMODY5で腎臓に異常が生じやすい原因であると考えられます。

MODYの原因遺伝子

病型 MODY中の割合(*) 遺伝子名 染色体の領域

MODY1

5~10%

HNF4A

20q13.12

MODY2

30~50%

GCK

7p13

MODY3

30~65%

HNF1A

12q24.31

MODY4

1%

PDX1

13q12.2

MODY5

5%以下

HNF1B

17q12

MODY6

1%以下

NEUROD1

2q31.3

MODY7

1%以下

KLF11

2p25.1

MODY8

1%以下

CEL

9q34.13

MODY9

1%以下

PAX4

7q32.1

MODY10

1%以下

INS

11p15.5

MODY11

1%以下

BLK

8p23.1

MODY12

1%以下

ABCC8

11p15.1

MODY13

1%以下

KCNJ11

11p15.1

MODY14

1%以下

APPL1

3p14.3

(*)海外のデータ。国内では病型ごとの割合は正確にわかっていない。

121 Mody(家族性若年糖尿病) 仕組み

MODYは、常染色体優性(顕性)遺伝形式で遺伝します。この遺伝形式では、父親と母親からそれぞれ受け継いだ遺伝子のうちのどちらか1つに病気の原因となる変異がある場合に発症します。つまり、両親のどちらかがこの病気である場合、子どもは50%の確率でMODYを発症する可能性があります。

Autosomal Dominant Inheritance

また、孤発例としてこの病気を発症する場合もあります。この場合、両親からはこの病気の原因となる遺伝子変異を受け継いだのではなく、遺伝子に新たな変異が生じたことで発症します。

どのように診断されるの?

MODYかどうかの判断は、患者さんが肥満ではなく若年で発症していること、家族や親せきなどの同じ家系の3世代以上で同様の患者さんがいた(家族歴がある)という基準が用いられています。より精度の高い効率的な基準の策定のため研究が進められています。

小児慢性特定疾病情報センターによれば、糖尿病と診断された患者さんのうち、以下のような症状や検査結果からMODYだと診断されます。

・常染色体優性(顕性)遺伝で発症

・膵島(膵臓の中でベータ細胞が存在する場所)関連自己抗体は、陰性である

・膵臓のベータ細胞機能の遺伝的障害による単一遺伝子糖尿病であり、遺伝学的検査により、HNF4a(MODY1)、Glukokinase(MODY2)、HNF1a(MODY3)、IPF-1(MODY4)、HNF1b(MODY5)、NeuroD1(MODY6)などの遺伝子に異常を認める

どのような治療が行われるの?

この病気は遺伝子の異常が原因となり、根本的な治療法はまだありません。糖尿病と血管への合併症は、一般の糖尿病や動脈硬化と同様の治療が行われます。

MODY2では多くの場合、治療を必要としないかは食事や運動療法が用いられ、予後は良好とされます。MODY3、MODY1では、進行性にインスリン分泌能が低下して重症となり、スルホニル尿素薬などの薬物療法が用いられることがあります。また、MODY5においては、末期腎不全に対して腎移植が行われることもあります。

どこで検査や治療が受けられるの?

日本でMODYの診療を行っていることを公開している、主な施設は以下です。

※このほか、診療している医療機関がございましたら、お問合せフォームからご連絡頂けますと幸いです。

患者会について

MODYの患者会で、ホームページを公開しているところは、以下です。

参考サイト

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