ロビノウ症候群

遺伝性疾患プラス編集部

英名 Robinow-syndrome
別名 Robinow症候群、ロビノウ・シルバーマン・スミス症候群(Robinow-Silverman-Smith syndrome)、Robinow dwarfism、Acral dysostosis with facial and genital abnormalities、Fetal face syndrome、Mesomelic dwarfism-small genitalia syndromeなど
日本の患者数 不明
発症頻度 不明
子どもに遺伝するか 遺伝する[常染色体優性(顕性)遺伝]または[常染色体劣性(潜性)遺伝形式]など
発症年齢 新生児期~乳児期
性別 男女とも
主な症状 骨格異常、特徴的な顔立ち、外性器の低形成、先天性心疾患など
原因遺伝子 ROR2、WNT5A、DVL1、DVL3など
治療 対症療法
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どのような病気?

ロビノウ(Robinow)症候群は、体のさまざまな部分、特に骨格の発達などに症状が見られる遺伝性疾患です。この病気の特徴や重症度は個人により異なりますが、原因遺伝子によって常染色体劣性(潜性)ロビノウ症候群と常染色体優性(顕性)ロビノウ症候群の2つの病型に分かれます。2つの病型は共通の症状や特徴が多いものの、常染色体優性(顕性)ロビノウ症候群では骨格の症状で重症度が軽度となる傾向があるなどの違いがあります。

常染色体劣性(潜性)ロビノウ症候群では、腕や脚の中間肢節と呼ばれる前腕(肘から前の部分)や下腿(ひざから足首までの部分)が短い、手足の指が短い(短指症)、脊柱後湾症、肋骨(ろっこつ)の癒合や欠損、低身長などの骨格の異常が見られます。

特徴的な顔立ちとして、大頭症、広くて突出している額、低い位置にある耳、眼と眼の間が離れている(両眼隔離)、突出している目、顔面中部の低形成、上を向いている鼻、広くて三角形の口、小顎症などが見られます。発育中の胎児の顔の構造に似ていることから「胎児顔」と呼ばれることもあります。

その他、男女ともに外性器の発育不全のほか、歯並びや歯茎の過剰形成など歯や歯茎にも異常が見られます。また、腎臓や心臓に生まれつきの異常が認められることもあります。ロビノウ症候群の予後は一般的に良好ですが、心臓疾患などの重症度によっては寿命に影響する場合もあるとされます。また、この病型の10~15%において発達の遅れが認められる場合があります。知能に関しては通常は正常範囲内であるとされます。

常染色体優性(顕性)ロビノウ症候群の症状は、常染色体劣性(潜性)ロビノウ症候群と似ている症状が多いですが、骨格の症状において重症度が軽度となる傾向があります。骨格の異常は、低身長、前腕が短い、短指症などが見られますが脊椎と肋骨の異常はほとんど見られず、低身長もそれほど重度ではありません。

顔立ちの特徴、外性器の発育不全、歯や歯茎の異常、腎臓や心臓の症状などは常染色体劣性(潜性)ロビノウ症候群と共通とされます。発達や知能は多くの場合正常の範囲ですが、少数で認知発達に遅延が見られるという報告もあります。

また、常染色体優性(顕性)ロビノウ症候群の中には、変異型と呼ばれる病型があり、ロビノウ症候群の骨硬化型とも呼ばれます。上記の常染色体優性(顕性)ロビノウ症候群の特徴や症状に加え、頭蓋骨において骨硬化症と呼ばれる異常に骨が硬くなり骨密度が増加する症状が見られることがあります。このほか、大頭症、難聴などを特徴とします。身長は正常の範囲とされます。

ロビノウ症候群で見られる症状

高頻度に見られる症状

低身長、前腕と下腿が短い(中間肢節短縮)

良く見られる症状

左右の目の間隔が広い(両眼隔離)、手と足が小さい、前腕が短い、外性器低形成、生まれた時の体重が在胎週数に比べ小さい(低出生体重)

しばしば見られる症状

大頭症、前髪の生え際が高い、前額部の突出、眼球突出、低い位置にある耳、後方に回転した耳、顔面中部後退(顔の中央がくぼんでいるように見える)、低い鼻梁(はなすじ)、短い鼻、広い鼻先、上向きの鼻孔、広がった鼻孔、長い人中(唇上部の溝)、口唇裂、三角形の口、舌小帯短縮症、舌癒着(舌小帯が短いか前方に付着し可動性が制限される)、二裂舌、歯茎(歯槽堤)が幅広い、歯肉肥大、歯叢生(歯が重なりあって生えている)、歯の不正咬合、歯並びが悪い、歯欠損症、小顎症、前椀骨(橈尺骨)の関節の脱臼、親指の末節骨(まっせつこつ、指先の骨)が二つに分かれる、短指症、合指症、指の末節骨が短い、爪異形成、小さい爪、小さい陰茎、翼状陰茎(陰茎から陰嚢まで腹側の皮膚が伸びている)、陰嚢低形成、停留精巣、陰核低形成、大陰唇形成不全、肋骨の欠損、肋骨の癒合、胸椎の癒合、半椎(椎体の半分が欠損する)、脊柱側弯症、脊柱後側弯症、肺動脈弁閉鎖、肺動脈弁狭窄、三尖弁閉鎖症、先天性心疾患、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、大動脈狭窄症、水腎症

まれに見られる症状

永久歯の萌出が非常に遅い、乳歯の残存、多嚢胞性異形成腎、臍ヘルニア、混合性難聴(伝音性難聴と感音性難聴の2つが合併した難聴)、血清テストステロン値の低下、神経発達遅滞

ロビノウ症候群の正確な発症頻度や患者数は不明です。

常染色体劣性(潜性)ロビノウ症候群では、これまでに医学文献などで報告されている患者さんは200人未満で、トルコ、オマーン、パキスタン、ブラジルなど、いくつかの国の家族で確認されています。常染色体優性(顕性)ロビノウ症候群の報告は80家族未満です。

何の遺伝子が原因となるの?

ロビノウ症候群の原因遺伝子は、病型によって異なります。

常染色体劣性(潜性)ロビノウ症候群は、9番染色体の9q22.31と呼ばれる領域に存在するROR2遺伝子の変異が原因となります。ROR2遺伝子は、受容体チロシンキナーゼと呼ばれるタンパク質ファミリーに属するROR2タンパク質の設計図となります。ROR2タンパク質の機能は十分に解明されていませんが、受容体チロシンキナーゼは細胞のシグナル伝達経路に関与するタンパク質群であり、ROR2タンパク質は、骨格、心臓、生殖器の出生前の正常な発達に重要な役割を果たしていると考えられています。ROR2遺伝子の変異により、細胞では正常なROR2タンパク質が生成されず、出生前からの発達が妨げられ、ロビノウ症候群の特徴的な症状が引き起こされる可能性があります。

常染色体優性(顕性)ロビノウ症候群の原因遺伝子として、1番染色体1p36.33領域のDVL1遺伝子、3番染色体3q27.1領域のDVL3遺伝子、3番染色体3p14.3領域のWNT5A遺伝子などが知られ、このうち、DVL1遺伝子は、変異型(骨硬化型)の原因となることがわかっています。これらの遺伝子が設計図となり作られるタンパク質はROR2タンパク質と同じシグナル伝達経路に関与すると考えられています。これらの遺伝子変異により、早期の発達に関与するシグナル伝達に異常が生じると考えられています。

また、これらの遺伝子以外にも、17番染色体17q21.31領域のFZD2遺伝子、17p13.3領域ののNXN遺伝子においても、ロビノウ症候群との関連が報告されています。一方で、ロビノウ症候群の特徴や症状が見られる人の中に、これらの遺伝子のいずれにも変異が見られず、原因不明の場合もあります。

ロビノウ症候群は、常染色体優性(顕性)遺伝形式、または常染色体劣性(潜性)遺伝形式で遺伝します。常染色体優性(顕性)遺伝形式では、両親のどちらかがロビノウ症候群の場合、子どもは50%の確率で発症します。常染色体劣性(潜性)遺伝形式では、父母から受け継いだ2つの遺伝子の両方に変異があることで発症します。両親はこの病気の保因者で、病気は発症しません。その他に、親からの遺伝ではなく、新しく発生した変異が原因となり孤発例として発症する場合もあります。

Autosomal Dominant Inheritance

Autosomal Recessive Inheritance

どのように診断されるの?

ロビノウ症候群はまれな病気であり、国内ではまだ確立した診断基準が設けられていません。

欧州の希少疾患情報サイト「orphanet」では、ロビノウ症候群の診断について、診断は患者さんの臨床的な所見や特徴的な顔の外観に基づいて行われるが、骨格の異常を確認するには放射線学的な検査が必要であると記載されています。

米国の遺伝性疾患情報サイト「GeneReviews」では、常染色体劣性(潜性)ロビノウ症候群(ROR2関連ロビノウ症候群)、常染色体優性(顕性)ロビノウ症候群の診断について、この病気の顔立ち、骨格、性器、などの特徴的な臨床所見のほか、家族に同じ病気の人がいる(家族歴)場合にこの病気が疑われ、診断の確定は遺伝学的検査の結果から行われる、と記載されています。

どのような治療が行われるの?

ロビノウ症候群には根本的な治療法はまだ確立されていないため、それぞれの症状に合わせた対症療法が中心となります。「GeneReviews」では以下のような治療や管理が記載されています。

心臓に異常が見られる場合には、専門医による治療が必要となります。停留精巣、外性器の異常、口唇裂、骨格の異常などは、必要に応じて手術が行われることがあります。男性の小陰茎症にはホルモン療法が有効な場合があります。歯並びに関しては、歯列矯正治療が必要となることが多いとされます。

この病気では、乳児期から小児期にかけ定期的な頭囲測定や発達評価が必要であるほか、歯科検査、聴力検査も行われます。また、必要に応じてそれぞれの専門医による定期的な心臓および腎臓検査が行われます。

どこで検査や治療が受けられるの?

日本でロビノウ症候群の診療を行っていることを公開している、主な施設は以下です。

※このほか、診療している医療機関がございましたら、お問合せフォームからご連絡頂けますと幸いです。

患者会について

難病の患者さん・ご家族、支えるさまざまな立場の方々とのネットワークづくりを行っている団体は、以下です。

参考サイト

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

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