どのような病気?
TNF受容体関連周期性症候群は、周期的に繰り返す発熱や、それに伴う発疹や関節痛などの発作を特徴とする遺伝性疾患です。
この病気の発症時期は乳児期から成人まで幅広いものの、多くの場合は幼児期までに発症します。この病気で最も高頻度に起こる発熱は、ほとんどの場合38度を超え、寒気を感じて震えるようなこと(悪寒戦慄・おかんせんりつ)もあります。
また、発熱に加えて筋痛、関節痛、手や足の発疹(広がることもある)、目の周りのむくみ、結膜炎、腹痛、胸痛などが起こる場合があります。筋痛は、全体的ではなく局所的で、発作中に手足の先端に移動する症状が見られます。皮膚の発疹は、筋痛と同じ位置に移動する紅斑や、じんましんなども認められます。腎臓へのアミロイドタンパク質の蓄積(アミロイドーシス)が起こることもあります。一方で、この病気の症状は患者さんごとに大きく異なり、国内では筋痛、結膜炎、目の周りのむくみ、胸痛、腹痛などの症状は比較的少ないとされています。
発熱発作の期間は通常3週間程度とされますが、数日となることもあれば数か月続く場合もあるなどさまざまです。発作の頻度は、通常は6週間から数年ごとに症状が現れますが、何年も発熱しない場合もあります。軽度の怪我、感染症、ストレス、運動、ホルモンバランスなどがきっかけとなって発熱することもありますが、多くの場合はこれらに関係なく自然に起こります。
この病気の予後は、約15%の患者さんに認められるアミロイドーシスの合併によって左右されます。腎臓へのアミロイド沈着によって、ネフローゼ症候群を合併し、最終的に腎不全が引き起こされる可能性があります。
TNF受容体関連周期性症候群で見られる症状 |
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高頻度に見られる症状 丹毒(たんどく、皮膚表層の感染症)、斑(皮膚にできるしみ)、発疹、筋肉痛、心膜炎、腹痛、下痢、繰り返す発熱 |
良く見られる症状 紅斑、関節炎、白血球増加、リンパ節腫脹、胸膜炎、脾腫、便秘、腸閉塞、精巣炎、嘔吐 |
しばしば見られる症状 あざができやすい、高メラニン色素斑(色素沈着過剰のしみ)、皮膚感染症、関節痛、筋炎、血管炎、筋膜炎、片頭痛、脳神経まひ、結膜炎、ぶどう膜炎(目の中の炎症)、繰り返す咽頭炎、胸痛、異常な心筋の形態、腹膜炎、仙腸関節形態の異常、感覚異常(皮膚のチクチク感など)、めまい、行動異常 |
TNF受容体関連周期性症候群の発症頻度は、100万人に1人と推定されています。世界では1,000人以上がこの病気であると診断されており、日本では約50人の患者さんがいると考えられています。
何の遺伝子が原因となるの?
TNF受容体関連周期性症候群は、12番染色体の12p13.31と呼ばれる領域に存在するTNFRSF1A遺伝子の変異によって発症することが知られています。TNFRSF1A遺伝子は、腫瘍壊死因子(TNF:Tumor necrosis factor)と呼ばれる、炎症や免疫反応に重要な役割を持つ物質と結合し、細胞内にその信号を伝える受容体である、TNFR1タンパク質の設計図となります。TNFやTNFR1には病原体や腫瘍から身体を守る働きがあります。
TNFR1タンパク質は、細胞膜(細胞を取り囲む膜)に存在しており、細胞外から来たTNFとTNFR1が結合することによって、炎症や、細胞の自己破壊を引き起こすような信号が細胞内に送られます。
TNF受容体関連周期性症候群を引き起こすTNFRSF1A遺伝子の変異によって、多くの場合異常な形状のTNFR1タンパク質が作り出されます。異常なTNFR1はTNFと結合できずに細胞内に凝集し、これが異なる炎症経路を常に活性化することで、この病気の過剰な炎症を引き起こすと考えられています。しかし、この病気におけるそれぞれの症状がどのように引き起こされるのかの詳細なメカニズムはまだはっきりわかっていません。
TNF受容体関連周期性症候群は常染色体優性(顕性)遺伝形式で遺伝します。この遺伝形式では、病気の親から子どもに変異が受け継がれる確率は50%です。しかし、変異が受け継がれてもこの病気を発症しない場合もあります。また、まれに親は病気や遺伝子変異を持っておらず、新しい変異が原因でこの病気を発症する(孤発例)場合もあります。
どのように診断されるの?
TNF受容体関連周期性症候群の診断基準として、(1)発熱(2)腹痛(3)筋痛(移動性)(4)皮疹(筋痛に伴う紅斑様皮疹)(5)結膜炎・眼窩周囲浮腫(6)胸痛(7)関節痛か単関節滑膜炎、の症状のうちどれかが6か月以上反復すること(複数の症状が同時に見られることが一般的)が必須条件となります。
それに加えて、(8)家族歴がある(9)20歳未満の発症(10)症状(症状は変化する)が平均5日以上持続する、の症状のうち2つ以上を満たす場合にこの病気の疑いありとされます。遺伝学的検査によりTNFRSF1A遺伝子に疾患と関連のある変異が認められた場合に診断が確定されます。疾患との関連が不明な変異が認められた場合は、他の似たような症状のある疾患を除外(鑑別診断)できた場合にこの病気であると診断されます。
どのような治療が行われるの?
TNF受容体関連周期性症候群において、根本的な治療法はまだ確立されていません。そのため、それぞれの症状や重症度に応じた対症療法が行われます。発作が軽症で頻度も低い場合には一般的な解熱鎮痛剤が用いられますが、そうではない場合にはプレドニゾロンなどのステロイド剤を使用して症状を見ながら使用量を減らし7~10日間で終了する治療が行われます。発作が重症でステロイド剤の効果が得られない場合などには、抗IL-1製剤であるカナキヌマブの治療が国内では認可されています。
どこで検査や治療が受けられるの?
日本でTNF受容体関連周期性症候群の診療を行っていることを公開している、主な施設は以下です。
※このほか、診療している医療機関がございましたら、お問合せフォームからご連絡頂けますと幸いです。
患者会について
難病の患者さん・ご家族、支えるさまざまな立場の方々とのネットワークづくりを行っている団体は、以下です。